バンコクの安宿街カオサンは2000年代初頭は東アジア人は日本人ばかりだったが、今は韓国人が目立つ
東南アジアを歩いていると、韓国語の文字、ハングルを見かけることが多くなった。例えばベトナム南部の都市ホーチミンなどは2012年ごろはあまり見かけなかったものの、今では街のあちこちにハングルの看板が見られるようになっている。
走っている車にも韓国車が増えた。タイやラオスでは「ヒュンダイ」の大型のバンを見かける。新しいモデルはそれなりにいいデザインで、悪くなさそうだ。特に嫌中感情が強いベトナムではバスやトラックの大型車は中国車より韓国メーカーが多い。乗用車でも韓国が多いのは、やはり値段が安いからとされる。
ホーチミンのタンソンニャット国際空港のエアポートバスは「大宇」
タイの場合、「ヒュンダイ」の「Grand Starex」というバンタイプの車種は、2497ccエンジン(175馬力)搭載で、約235万バーツ(約816万円)~になる。この車種にかなり近いスペックというと「トヨタ」が正規販売する「ヴェルファイア」だ。エンジンも2494ccでほぼ同じだが、箱のサイズはややヴェルファイアの方が小さい。これが約375万バーツ(約1300万円)~だ。500万円近くの差が出てしまうのだ。
家電市場に目を向けても近年は「LGエレクトロニクス」や「サムスン」がよく売れている。性能とデザインは別に劣ってない上に、やはり価格がものを言っている。東南アジアの人々は全般的に品質よりも、目先の価格に反応する。もちろん、東南アジアでは品質は今でも日本メーカーが上とされてはいるものの、韓国ブランドと比べるとやや割高に感じられてしまうのである。
韓国勢が東南アジアで強いのは、一時期ほどではないがいわゆるK-POPや韓国ドラマを徹底的に売り込んで、各国で放映されたこともある。日本でも韓国芸能人の日本進出やドラマ放映があって人気を博したが、東南アジアはそれ以上に浸透していた。
また、韓国メーカーは現地に進出していることも売上に影響しているのではないか。もちろん日本勢も韓国メーカー以前にタイなどには来ているものの、韓国人は日本企業が行かない辺鄙な場所にまで現れて展開する。フットワークの軽さも韓国メーカーの強みだ。
先日、タイ・バンコクにある日本人経営の賃貸仲介業者として最大手と言われる「ディアライフ」社に取材をしていたところ、日本人相手に商売をしていた同社が韓国人向けの部門を今から1年ほどの前に開設したと聞いた。韓国人の問い合わせが増えているからなのだとか。ディアライフの韓国人部門を担当する高村さんに話を聞いた。
「韓国人の顧客も日本人顧客同様に企業駐在員が多いです。しかし、日本人と大きく違うのは、韓国人は賃貸ではなく購入を前提に物件を探す傾向にあります」
日本人がバンコクで不動産購入を考える場合、多くは「投資」を目的にする。そのため、購入する顧客が負うリスク(管理や入居率の問題など)を憂慮したディアライフは賃貸を専門としてきた。しかし、ここに来て韓国人が増加し、購入物件を探しているために専門の部署を創設したほどだという。
そう、バンコクもまた韓国人が増えているのだ。タイ観光スポーツ省などの統計だと、日本人はコンスタントに100万人の入国者数があり、2010年を過ぎると130万~150万人超の入国者数を誇る。韓国人は2010年以前は100万人を超えるか超えないかの水準だったのが、今やほぼ日本人と同じくらいかそれ以上の人数がタイを訪れる。日本のほぼ半分の人口差から見たらなお多い。
そのため、バンコクにも韓国人社会が形成され、韓国人経営の不動産会社もあるにはある。しかし、日系が好まれるのには理由があるとディアライフの高村さんは見る。
「韓国人は家賃を払うなら買うという考え方です。高額な買いものになりますから、騙されたくないですよね。韓国人の自営業者はしたたかな人が多いので不安があり、企業駐在員は日系の不動産会社に相談に来るのです」
そんな高村さんも名前こそ日本人であるが、北朝鮮籍から韓国に帰化した人物だ。在日朝鮮人として東京の町田で生まれ育ち、ムエタイ選手になるために14年ほど前、20歳のころにタイに渡ってきた。そのときに北朝鮮籍だと選手になることが難しかったそうで、韓国に帰化することに決めたという。