自民党総裁選公開討論会の一部を「信号無視話法」分析してみた
※9月19日追記 犬飼氏が動画による解説を作成されました。併せて御覧ください。
1問目 北朝鮮拉致問題(回答者:安倍総理)
記者クラブから安倍総理に対し、以下のような質問がされた。
「安倍政権は一貫して拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと言われてきた。一体どうなっているのか? ご家族も高齢になっている。現状はどうなっているのか? 見通しはあるのか?」
この質問に対する安倍総理の回答がこれだ。
「あの、えー、拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言った事はございません。これは、あの、えー、ご家族の皆さんがですね、えー、そういう発言をされた方がおられるとは承知をしておりますが、えー、ですから私も大変大きな責任を感じております。
あの、おー、2007年に、いや、2002年にですね。ま、彼らに5人の被害者の方々が帰国をされて家族の方と抱き合っていた。横田滋さん、早紀江さん。滋さん会長を務めておられましたから、そこにおられた。しかし残念ながらそこにはめぐみさんの姿はなかった。涙を流しておられた。なんとかですね、このご両親の手で子どもたちを抱きしめる日を迎えたいとこう思ってずっとやって参りました。ま、そこで先般、米朝首脳会談が行われました。そしてそこで拉致問題について私の考え方、日本の考え方を金正恩委員長に伝えました。
次はまた自身が金正恩委員長と向き合い、この問題を解決しなければならないと決意しています。もちろん相手があることでありますから、そう簡単ではありませんがあらゆるチャンスを逃さずに。これはあらゆるチャンスを逃さずにそのチャンスをつかみたいと思っています。あの、今どういう交渉しているかということはもちろん申し上げられませんし、どういう接触をしてるかということも申し上げることはできませんが、あらゆるチャンスを逃さないという考え方のもとにですね、いま申し上げた決意のもとに進めていきたいと思っています」
まず、最初の段落。「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言った事はございません」という発言を中心に虚偽の疑いが強いと判断して、赤信号とした。その根拠として、安倍総理の拉致問題に関する発言を紹介したい。
「再び総理を拝命し、必ず安倍内閣で完全解決の決意で進んでいきたい。」
(出典:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会ホームページ 2012.12.28全国協議会ニュース、最終アクセス日時 2018/9/15 15:35)
「そして何よりも、拉致問題の解決です。全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱きしめる日が訪れるまで、私の使命は終わりません。北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しの三点に向けて、全力を尽くします。」
(出典:内閣官房内閣広報室 2013年1月28日安倍内閣総理大臣所信表明演説、最終アクセス日時 2018/9/15 15:39)
これらの発言は総理に再就任した2012年12月から翌1月にかけてのものである。誰がどう読んでも、「安倍政権で拉致問題を解決する」という決意に読み取れる。
また、中盤は、回答者でありながら何故か質問内容(拉致問題)に関する経緯を説明しているだけのため、黄信号とした。
終盤は青信号としたが、「あらゆるチャンスを逃さずにそのチャンスをつかみたい」という非常に抽象的な回答にとどまっている。
現職の安倍晋三総理と石破茂・元幹事長の一騎討ちとなった自民党総裁選。9月6日に発生した北海道胆振東部地震の対応を優先するという理由で3日間の総裁選活動自粛を挟んだ一方、投開票日は9月20日のまま延期されなかった。そのため、候補者の討論会が一度も行われないという奇妙な状況が続いてきたが、ようやく9月14日に日本記者クラブ主催の討論会が実現した。討論会の第1部は安倍総理と石破氏による一問一答形式、第2部は記者クラブの代表記者が両者に質問する形式をとった。
本記事では、この第2部での北朝鮮拉致問題に関する質疑3問を取り上げたい。この部分を選んだ理由は、「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言った事はございません」という安倍総理の衝撃的な発言があったにも関わらず、翌15日時点でほとんどのメディアが報じていないためだ。
また、安倍総理、石破氏の回答は信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化していく。
衝撃の「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけなんて言ってない」発言
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