豪雨、地震、水害……。自然災害で窮地に立たされるローカル線

高千穂鉄道高千穂線

高千穂鉄道高千穂線は’05年の台風で運行休止となり、’08年に全線が廃止となった


 西日本を襲い多数の死者・負傷者を出した台風21号。過疎化により廃線が取り沙汰されていたところに、全道停電を引き起こした平成30年北海道胆振東部地震……。次々と襲いかかる災害によって、地方のローカル線はいったいどうなってしまうのか?

復旧しても赤字。不通のローカル線の厳しい現状

 豪雨に台風、地震……。日本列島には大規模な自然災害が連続して襲いかかる。電気や道路、水道など日常生活に不可欠なインフラにも大きな影響が出ているが、そのなかでも復旧すらままならない状況に陥っているのが、「鉄道」だ。鉄道に詳しいライターの鼠入昌史氏は「特に地方のローカル線は苦境に立たされている」と話す。

「台風21号では関西の主要路線が影響を受け、なかでも関西国際空港へのアクセスを担うJR西日本と南海電鉄の路線の被害は大きい。ただ、こうした利用者が多く重要度の高い路線は早期復旧に向けた動きが見られるもの。むしろ、問題なのは西日本豪雨で被災した中国山地のローカル線のような、利用者の少ない路線です」

 都心部の被害ばかりが注目されがちだが、その陰でローカル線は崖っぷちに立たされているのだ。これまでも宮崎県の高千穂高原鉄道や岩手県のJR岩泉線など、自然災害をキッカケに廃止された路線は少なくない。そして災害で鉄路が寸断されるたびに、新たな“廃線危機”が浮上してしまうのだ。

「もともとこうした路線は災害前から利用者数が低迷し、存続の危機にさらされていました。災害はいわば“トドメ”のようなもの。数十億円に及ぶ復旧コストそのものも問題ですが、むしろJRなど事業者は復旧後も赤字の垂れ流しになることを懸念して、復旧に二の足を踏んでいるのが実情でしょう。ただ、幸いにも西日本豪雨で被害を受けた路線では広島県と岡山県を走る芸備線のように年内の復旧が難しいとされている路線はありますが、まだ廃止の動きは見られません」(鼠入氏)

芸備線

芸備線

代行バスの利用者は数人「鉄道時代と変わらない」

 では、こうした“被災路線”の現状はどうなっているのだろうか。西日本豪雨によって土砂流入や橋桁流出により長期間不通となっている福塩線・芸備線の代行バスを利用してみた。すると、日中ということもあってか利用者は記者を含めてせいぜい5~6人。朝夕には通学で利用する学生で賑わうというが、それでも観光バス2台にも満たない利用者数だとか。日中はマイクロバスで事足りるレベルで、通院で利用しているという高齢者が目立つ程度だ。代行バスのこの惨状、鉄道が走っていたときも同様だったのだろうか? 利用者や沿線住民に話を聞くと……。

福塩線

福塩線

「これでも朝は学生さんですごく混雑するんですよ。ただ、昼間はいつもこんなもの。バスだと時間が余計にかかるのが不便ですね。復旧は早いほうがいいんですが、この状況を見るとムリは言えませんよ(苦笑)」(バスの利用者)
 そんな話を聞きながら、記者が辿り着いたのは広島県北部、中国山地有数の“ターミナル”三次駅。複数の鉄道路線が交わる交通の要衝である。しかし、3月には乗り入れ路線のひとつ三江線が廃止され、先述の福塩線・芸備線も西日本豪雨で運休中。すっかり駅前もゴーストタウンの様相だ。

三次駅

三次駅

「鉄道が走っていたときが賑やかだったかは微妙ですね。町の中心は少し離れているし、みんなクルマですからね」(沿線住民)
 と、沿線住民の日常生活にはさほど影響を及ぼしていないようだ。ただ、一方で次のような声もある。

 「廃止なんてもってのほか。一刻も早く復旧してほしい。バスだとダイヤが乱れて、これまで乗り換えていた列車に乗り遅れることもあるので……」(沿線住民)

 学生や高齢者など、クルマを運転できない“交通弱者”にとってはバス代行の現状にかなり不便を強いられている面もあるのだ。

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自治体と事業者の対立が鉄路復旧の大きな壁に
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