9月30日投開票の沖縄県知事選は「他県のこと」では済まない選挙である

沖縄 いよいよ9月30日投開票の沖縄県知事選がスタートしました。この選挙には翁長雄志さんの遺志を継ぐ「オール沖縄」の玉城デニーさん、自民・公明・維新が推薦する宜野湾市長の佐喜眞淳さんをはじめ、全部で4名の候補者が立候補しました。最大の争点は、翁長雄志さんが亡くなる直前に承認撤回を進めた「辺野古基地建設の是非」ですが、辺野古基地問題が争点になるのは都合が悪いため、佐喜眞淳さんの陣営は「辺野古のへの字も出さない」という姿勢で選挙に挑んでいます。今年6月の新潟県知事選でも自民・公明・維新は「柏崎刈羽原発の再稼働問題を争点化させない」という作戦を展開し、見事に当選を果たしています。沖縄県知事選でも辺野古基地問題を避け、当選することができるのでしょうか。  沖縄県知事選に先駆け、9月9日に行われた名護市議選では、辺野古基地建設に反対する議員が議席を減らしたため、基地推進派と基地反対派がまったくの同数になるという現象が起こりました。これにより、今年2月の名護市長で、自民・公明・維新が推薦していた基地推進派の渡具知武豊さんが市長になっていることもあり、辺野古基地の建設は今まで以上にブレーキがかかりにくい状態になっています。

勝敗のポイントを握るのは無関心な若者たち

 実は、沖縄の若者たちには戦争の体験がほとんど共有されていません。ひめゆりの塔や平和祈念公園、各地に残るガマ(防空壕)など、戦争の悲惨さを物語る「戦争遺産」がたくさん残り、自らも戦争を体験してきたおじいやおばあがたくさんいるのに、多くの沖縄の若者が小学生の頃に課外授業で一度行ったことがある程度で、戦争の悲惨さを学ぶ機会はほとんど与えられていません。そのため、若者に基地問題について聞くと「基地はあってもなくてもいい」という無関心な答えがほとんどで、ほぼ全員が「どうせ自分たちには何もできない」と考えていました。  確かに、自分の1票で何が変わるのかと思うかもしれませんが、実は、この選挙によって沖縄の運命は大きく変わります。  佐喜眞淳さんが当選すれば、辺野古に新しい基地が建設され、玉城デニーさんが当選すれば辺野古に新しい基地が建設されるのは止まります。結局、国があらゆる手段を尽くすので止められないのではないかと思うかもしれませんが、少なくとも止めるために頑張ることはできるのです。  これだけでも十分違いがありますが、若者に関心の高い経済政策においては、佐喜眞淳さんが当選すれば国からいただく交付金に依存しながら経済振興を図ることになり、玉城デニーさんが当選すれば観光などに力を入れて沖縄の自立した経済を目指すことになります。簡単に言うと、親からお小遣いをもらいながらバイトをするか、完全に自分で働いたお金で自立して生きていくのかを問われている選挙だと言えます。長期的に考えれば自分で働いて稼いだ方が経済は安定しますが、自分で働いて稼ぐのは大変なことなので、親からもらえるお小遣いでぬくぬく暮らしたいと考える人は意外とたくさんいるのです。
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