タイで人気爆発の48グループ「BNK48」がもたらした、タイ人青年の意識変化

タイの若年層に圧倒的に人気

 娘の学校におけるBNK48人気はかなりすごい。娘の同級生の姉がメンバーのひとりらしく、そういった事情があるにしても、かなり注目度が高い。タイだから当然の流れと言うべきか、海賊版のグッズもすでに学校近辺を中心に販売されているという。ブロマイドなどがそうだが、さらにタイ語のサイトではブロマイドに本物のサインがあったらいくらで売れるという相場表まで存在する。海賊版は望ましいことではないが、ニセモノが出回るということは人気がある故と言える。
ダンス教室

BNK48のシアター周辺の子どもダンス教室でもかかっている曲は「恋するフォーチューンクッキー」だった

 タイに住む日本人の出版関係者が写真撮影をさせてもらったことがあったという。そのとき、その人の小学校低学年の息子がやはりBNK48に興味があったそうで、撮影現場に同行してきた。そのときにこっそりメンバーに一緒に写真を撮れないかとお願いしたところ、断られた。ファンとツーショットでの写真は禁じられているのだという。タイ人なら「まあ、子どもだしいいか」となりそうだが、徹底されていたようだ。その点は日本式だなと感じた。

BNKがもたらしたタイ人青年の意識変化

 バンコク市内を走る路線バスなどにもラッピング広告でメンバーの写真が大きく車両に貼られ、街中を走る。電車のスカイトレイン車内でも動画広告に出演するBNK48の姿が見られる。スポットのテレビコマーシャルで売り出す楽曲の宣伝ならよくあるが、さまざまな広告媒体にアイドルが露出することはあまりなかった。これまでタイの芸能関係者がアイドルをこういった形で売り込むということはなかったという点で、これは間違いなく日本式だと言える。  ちなみに、タイ人はシャイであるということと、バンコクの人は芸能人を見かける機会が多いことから、街中で芸能人を見てもあまり騒がない。ある女性タイ人と歩いていたときに大物女優を見かけたが、誰も写真を撮ってくれだとかサインをくれといったことをしなかった。それについてそのタイ人の友人に聞いてみると、「有名人だってプライベートはあるでしょう?」 と、一般の人が気遣っていた。だから、タイの芸能人は多くがマスクをしたりすることなく、堂々と街中を歩いている。  それから、「カワイイ」はタイだと女性が追いかける傾向がある。例えばあるメイドカフェもタイに進出してきたばかりのころは客が女のコばかりだった。男がカワイイを求めることは違うという風潮がタイにあった。  そういった、芸能人に気遣いする文化や、カワイイをおおっぴらに追えない価値観に縛られて欲求不満になっていたタイ人青少年たちを、日本式アイドル、つまりBNK48が開放しているのではないかと筆者は感じる。  モバイルさんの取材はBNK48のシアター横だったが、同日は公演があったようで、会場前は10代20代のタイ人青少年で埋め尽くされていた。  間違いなく、今タイで成功している「日本関連」は和食と「アイドルの日本式売り方」であろう。  とりあえず取材以来、BNK48メンバーの公式インスタグラムを筆者は片っ端からフォローし、娘と一緒に見て楽しんでいる。いわゆるお年頃となった娘との会話のネタができたことだけでも、筆者はモバイルさんとBNK48に感謝なのである。
娘の宿題

娘の宿題を見ると、BNK48のステージをイメージした絵を描いていた

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)が発売
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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