石破事務所に送られてきた激励の手紙の一部
――では最後の質問ですが、最近石破派の若い先生がたの言動を見てみますと、石破さんを支えるために、ものすごく奮闘されておられる印象を受けます。例えば後藤田正純さんが、「総裁選の最中に、安倍首相が不要不急の外遊入れた」という事をフェイスブックで批判されてましてですね、これは僕はもう誠に正論だなとは思うんですが、非常に奮闘されておられる。これは言ってはいけない言葉かもしれませんが、もしこの後総裁選で石破さんが負けてその後冷遇されるようなことがあったら、いま奮闘されている若い人たちが「党を割って出るぞ」ぐらいのことをいいかねないなと思っているのですけども、もしそのようなことが総裁選後にあった場合、どうされますか?
石破:うちの水月会のメンバーは、「ポストとカネが欲しければ、石破派なんかいないよ」って言い放つことのできる人たちなので。この総裁選を通じて、すごく確信しているのですけど、本当にみんな政策的にも政治的にもそれぞれ非常に能力の高い議員の集まりなんです。
――今回の総裁選では、2回だけ公開討論が予定されています。どういう気持ちで臨まれますか?
石破:そこはもう私の悪い癖で、くだくだいろんなことをいうところがあるので。やっぱりそれでは討論としてうまくないと思っています。ですから、見ている側にどのように映るか配慮していきたいとおもいます。安倍総理が現職総理として示される実績、それに対して私が示すべきは、その先の政策です。見ている人が石破の言ってる政策がいいんじゃないのっていうふうに思ってもらえるディベートにしなければいかんと思っています。
それからあの……党を出るとかは、私一回出ているんで、「青い鳥はいない」っていうのはよくわかっているつもりです。一回出てみて。あの時、「小沢一郎先生こそが真の保守だ」と思って、私は不信任案に賛成して無所属で当選して、その後自民党籍に戻りました。小沢さんは「真の保守」ではなかった、ということに気付いたときのショックは大きかったです。
――何きっかけで気づかれました?
石破:それは、一番は、「新進党で総選挙戦う」となった解散のその日にFAXが来て、「集団的自衛権は認めない」「消費税は21世紀まで3%に据え置く」っていうのをみたときでしょうね。その前に、すでに「小沢-羽田闘争」、つまり小沢先生と羽田先生で代表の座を争う、それが派閥抗争化する、という状態になっていて、なんなんだこれは、って思いましたし。あの公約が最後通牒のようなものでした。所詮、人の集まりだから、自民党だろうと新進党だろうと同じことがあるのだと。ただ自民党の強さっていうのは、地方に根を張っているということです。ですから、どの党でも理想は描けるんでしょうが、地方に根を張ってる自民党っていうのは強いんです。この自民党からみんなで国を変えるしかないと私は思って、何度も総裁選にチャレンジしているのです。今回も、ぜひ見届けてください。
* * *
足早にすすんだインタビューだったが、石破氏はいささか不躾なこちらの質問にも忌憚なく答えてくれた。
中でも興味深かったのは、憲法9条改正案についての見解の違いだ。「自衛隊違憲論を封じこめるため」を改憲の理由にあげ9条1項2項はそのままで第3項で自衛隊明記を主張する安倍氏、平成24年自民党憲法草案に忠実に2項を削除したうえ国軍の創設とシビリアンコントロールを明記すべきだと主張する石破氏。
繰り返すまでもないことだが、自民党総裁選は、事実上、我が国の首相を選ぶ選挙である。泣いても笑っても、その選挙はこの二人で戦われる。
ちなみに、本サイトも自民党総裁選管理委員会の「公平・公正な報道」要請に従い、安倍晋三氏側にも取材要請を出している。取材要請が通れば、今回の石破茂氏インタビューと同じように菅野がインタビューし、同じ文字数を割いてお伝えする予定だ。
なお、安倍氏サイドからは、まだ返答を頂いていない。
<インタビュー・構成/菅野完 撮影/菊竹規>
すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『
日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。現在、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中。また、メルマガ「菅野完リポート」(
https://sugano.shop)も、目下どこよりも早く森友問題などを解説するメディアとして注目されている。