健康被害続出に経済損失は数千億円。サマータイム導入は日本の息の根を止める
2018.09.11
酷暑、そして五輪の旗印のもとに注目を集めているサマータイム導入。「暑さ対策」を名目に、政府も対応を検討し始めているというが、その実現度は!?
五輪開催を’20年に控えてブレーキが故障しているのか、今年に入ってからの森喜朗大会組織委員会会長のアクセル全開の“暴走”が世間を賑わせている。曰く、「東京五輪を迎えるにあたり暑さはチャンス」、「サマータイムの導入を首相の決断でやってほしい」と。
森会長は’14年頃からすでにサマータイムの導入を提唱しており、今年8月には安倍首相に要請している。今回提唱されたサマータイムとは、’19~’21年の2年間実施され、日照時間の長い夏に限り日本国中の時計の針を2時間先に進め、昼間時間を有効に使おうというもの。ちなみにサマータイム期間中の朝7時は、現在の時間の朝5時ということになる。
森会長は、東京五輪でマラソンを朝7時(現朝5時)にスタートすれば、日が高くなって暑くなる前にレースを終えることができるという“暑さ対策”のメリットを一番に挙げている。しかし、時間を繰り上げても気温は1~2℃しか違わないのは今夏が証明した。
現在、サマータイムは世界60か国で実施されているものの、ロシア、中国、インド、韓国など、一旦、採用しながら廃止した国も多い。日本でも戦後すぐの’48年から導入されていた時期もあったが、長時間労働が社会問題化し、結局4年で廃止になった経緯がある。
そして70年たった今、再び日本で“早起きの強要”が実施されようとしているのだ。
日本睡眠学会理事の神山潤医師は、サマータイム導入による健康被害についてこう警鐘を鳴らす。
「サマータイムは、ただ単純に時計の針を2時間早めるという話ではありません。間違いなく寝不足や時差ボケの状態が続く人が出てきます。眠気に強い/弱い人、長時間/短時間睡眠が適正な人などがいるなかで、それを一律にするのは大変危険です。サマータイム導入で最も生体リズムを狂わされるのは“夜型”の人でしょう」
海外の研究でも、サマータイム導入による健康被害は多数報告されている。
「日本よりも睡眠時間が長い国でさえ、サマータイムへの変更時には心筋梗塞、脳卒中、(寝不足による)交通事故が増えるということが報告されています。オーストラリアでは、睡眠不足でうつ病を発症し自殺する人が急増したという例もあります」
しかし、日本ではそれ以上の健康被害が予想される。総務省の’16年の社会生活基本調査によれば、日本人の一日の睡眠時間の平均は7時間40分。経済協力開発機構(OECD)の国際調査と見比べると世界最短レベルだった。日本人は「世界一眠りを疎かにする国民」なのだ。神山氏は指摘する。
「私の患者さんのなかには、睡眠不足を指摘すると『4時間も寝ているのに睡眠不足なんてことあるか!』と怒ったり『仕事があるのでこれ以上、睡眠時間は削れない』と言う人もいます。居眠り=サボっているという偏見が日本では根強いのでしょう。そもそも“寝てない自慢”をする国なんて、世界で日本ぐらいのものですよ」
こうした悪しき生活態度を改めない限り、サマータイムの導入など自殺行為としか言いようがない。眠りと脳も密接に関係している。睡眠の量と質の低下は、前頭前野にも悪影響を及ぼすという。
「前頭前野の機能が衰えると、感情のコントロールや適切な判断が難しくなります。こんなシステムを思いつきで導入しようとしているおじいさん(森会長)の前頭前野を一度調べたほうがいいかもしれません(笑)」
五輪のためだけに2時間の早寝早起きが必要か?
導入で心筋梗塞や脳卒中で死亡も!?
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