「ウッドボール」は店主がいるときに限り仮想通貨(銘柄限定)で決済ができる
日本では熱狂的なブームも一段落したが、世界的に仮想通貨(暗号通貨)のレートが上昇し、多くの投資家が莫大な資産を形成した2017年は日本人在住者の多い東南アジアのタイの首都バンコクでも仮想通貨が盛り上がりを見せていた。日本人在住者たちの仮想通貨への期待はかなり大きく、普段投資に興味がなかったような人もスマートフォンの証券会社アプリで仮想通貨の値動きをチェックしていたほどだ。
タイ在住の日本人が仮想通貨に注目したのはマネーゲーム以外の要素も大きかった。というのも、海外在住だと、日本に置いてある資産を国外に持ち込むときにいろいろな面倒があるからだ。海外送金や多額の現金持ち出しは面倒な手続きや安くない手数料がかかる。東南アジアであれば香港や台湾経由で闇の送金ルートがあるとされるが、万が一トラブルが起こったときに全額を失うリスクもある。
その点、仮想通貨の性質が国外に資産を持ち出しやすいと考えられたことが第一の要素だ。
もちろん、それに加えて、レートが上昇したことでキャピタルゲイン(売買による値差で得られる利益)も大きくなり、投資商品としても魅力があったのは間違いない。
しかし、多くの国が規制したり、経済的に地位の高い人たちが否定的な発言をしていたことからある程度の水準で頭打ちになり、熱狂的なブームが落ち着いた。タイ在住日本人の仮想通貨熱も若干冷めたようである。
在住日本人が多いタイでは以前から30代から40代の日本人の中に株式投資などで生計を立てる個人投資家がいる。
10年以上前は通信速度が遅く、5分間の動画サイトを観るために10分待たなければいけないほどだったが、今は日本ほど早くはなくとも、ストレスのないネット環境がある。そんな中にオンライン証券会社が登場し、2016年後半あるいは2017年に入ってから、FX取引やバイナリーオプション取引の宣伝がネット上に現れるようになった。
タイでは一定の条件を満たすことで株式取引などのキャピタルゲインは無税となる。そのため、物価の安いタイでノマドワーカー的に暮らしたいという個人投資家が昼間はエアコンの効いた部屋でチャートとにらめっこをして、夜に欧米など世界中の個人投資家の集まりで情報交換をしていた。今回の仮想通貨ブームではそういった専業の個人投資家たちも投資したと見られるが、それとは別に、タイに赴任してきた日系企業駐在員や自営業者も仮想通貨に一喜一憂していた。
バンコク都内では仮想通貨で決済できる飲食店なども登場したり、とにかく2017年の後半は日本人社会の中で仮想通貨の話を聞かない日がなかったほどである。その中には「仮想通貨のキャピタルゲインに税金がかからない」という理由で投資をしていた人もいたようだが、2018年5月14日に「仮想通貨税」が施行され、税率15%が課せられることになった。日本だと最大で45%もかかり、それよりはマシだが、仮想通貨は税率がゼロと思っていた人にはガックリときたのではないか。
世界中の仮想通貨ブームの収束と共に、タイでもタイ証券取引委員会の規制管轄下で課税対象となったことで、在住日本人の仮想通貨熱はさらに下がっている。
課税対象となった仮想通貨だが、タイ政府は仮想通貨を否定しているわけではない。元々タイ国内の仮想通貨取引所は数えるほどしかなかったが、法令施行から90日の今年8月14日までにタイ国内の取引所やディーラー、ICOトークン発行体がタイ証券取引委員会に登録すれば、正式に事業を進めることができる。証券会社と顧客の資産を分ける信託保全も進むなど、課税はされるものの投資家にはよりよい環境になると見込まれる。