しかし、2014年末からの石油価格の下落からコロンビアにも経済危機が訪れた。それでまたコカの栽培に戻る農家が出てきたのだ。ただ、この頃はそれでも、助成金を期待してコカの栽培を放棄をした農家も次第に増えて行った。当初、助成金の対象となる農家は5万5000世帯とされていたが、昨年は12万7000世帯まで増えていた。今年は20万世帯にまで増えると見込まれているという。この助成金付与の政策で昨年は4万ヘクタールのコカ栽培が放棄されたという。
つまり、助成金によってコカ栽培を自主的に放棄させるという政策は功を奏してはいたのである。ではなぜ、増えたのか?
それは、残念ながらこの栽培放棄もすべて事実とは言い切れない部分もあるとされているからだ。というのは、政府の監視外の土地でコカの栽培を行っている農家も存在しているのである。
今月就任したドゥケ大統領は、作付面積20万9000ヘクタール、921トンの生産をこれから縮小させねばならないという任務を負っているのである。彼はドローンによって除草剤を散布する意向だとしている。(参照:「
El Pais」)
「大して儲からない」コカ栽培にさえ頼らざるを得ない貧農
FARCが和平交渉を結んで解散したといっても、この合意に反対していた戦闘員は新しくコロンビア革命軍―人民軍(FARC-EP)という組織を結成して、その配下には11の分派と19の小規模な集団とで構成されるまでになっている。
更に、ゲリラ組織には民族解放軍(ELN)、人民解放軍(EPL)、カルテル・ゴルフォそして小規模のカルテルといった組織が麻薬を収入源のひとつにしてコロンビア国内から一部エクアドルにかけて麻薬の栽培から生産そして密売を手掛けているのである。また、メキシコのカルテルもコロンビアでのコカの生産に直接介入してコカインの生産をコントロールしようとしている。
これらが意味するものは、政府がコカの栽培農家を徹底してコントロールして行かない限り、麻薬を重要な収入源としている犯罪組織は農家がコカの栽培から離れることを許さなくなっているのである。
コカを栽培している農家の月収はコロンビアの最低賃金の56%しかないという。それでも71%の農家はコカの栽培の方が他の農作物の栽培よりも収入が良いというのである。だから、農家の自主性に任せてコカの栽培を放棄させることは非現実的なのである。(参照:「
Infobae」)