このように、省庁のガバナンスや政府の嘘が問題となる中、明らかになったのが、当時の財務省事務次官のセクハラ問題だった。
発言自体の問題もさておき、任命権者たる麻生財務大臣の発言は、セクハラを容認していると取られかねない発言だった。
“一方的な訴え、取扱いのしようがないです。状況が分かるよう音声の声の人が出てこなきゃならないでしょ。本人が申し出てこなけりゃどうしようもないですね。”麻生太郎副総理 財務大臣(自由民主党)(参照:
「本人が申し出て」財務省の対応に批判の声…福田事務次官“セクハラ疑惑” – FNN.jpプライムオンライン)
また、下村元文部科学大臣が「ある意味犯罪」などとテレビ局の記者を批判したことも波紋を呼んだ。
“テレビ局の人が、隠してとっておいて週刊誌に売ること自体がはめられていますよ。ある意味で犯罪だと思う”下村博文 元文部科学大臣――4月22日 講演にて(参照:
「しんぶん赤旗」
また、セクハラ問題へのパフォーマンスとして黒い服を着た野党議員を
「セクハラとは縁遠い方々」などと述べた
長尾たかし衆院議員(自由民主党)は、後に発言を撤回したことも記しておく。(参照:
女性議員に「セクハラと縁遠い方々」 自民・長尾氏、ツイート…削除:朝日新聞)
福田氏は後に辞任を表明し、佐川氏と並び、財務省のトップ二人が不在という異常な事態に陥った。
このような異常な状態の中、野党は審議拒否に踏切り、「四項目」を審議復帰の条件として上げる。
・財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑や同省による決裁文書改ざん問題を踏まえた麻生氏の辞任
・森友・加計学園問題に関連する柳瀬唯夫・元首相秘書官らの証人喚問
・財務省の改ざん問題に関する調査結果の4月中の公表
・イラクに派遣した自衛隊の日報問題の真相究明
――の4項目である。(参照:
麻生財務相の辞任要求、自民「応じられぬ」 野党に回答:朝日新聞)
国会は2週間以上も空転し、妥協点が見えない中、最終的には柳瀬氏の参考人招致を条件に、審議に復帰することになる。
“話し合いに応じようと思う。議長の要望に応えられるように、どこまで歩み寄りができるのかというのがこれからの段階だ”辻元清美 国対委員長(立憲民主党)
審議拒否は野党にもダメージを与え、与党議員からの批判も相次いだ。
また、この間に「希望の党」と「民進党」が合併するなど、野党間の枠組みにも変化があった。
参考人招致に応じた柳瀬氏は、記憶にない、と語っていた前回の招致からは一転し、加計学園関係者との接触を認めた。
一方、面会は特別なものではなかったし、国家戦略特区関係ではなかったことも強調した。
“総理秘書官は総理大臣と一心同体ですよ。しかも、将来の許認可の対象事業者、補助金の対象事業者でもある方とあなたが会うと、それは総理に累が及ぶんですよ。
では、お聞きしますけれども、あなたが総理秘書官として民間の、外部の方に会う会わないの基準は何ですか。”江田憲司 衆院議員(無所属の会)
“よっぽど反社会的勢力であるとかそういうことを別にすれば、できるだけアポイントの申入れがあればお会いするようにしてございました。”柳瀬唯夫審議官(経済産業省)
また、重要なポイントとして、総理秘書官であった柳瀬氏が、総理の親友が理事長を務める加計学園の関係者と面会しながら、それについて
一言たりとも総理に報告しなかった、と証言したことがあげられる。
“ランチとかそういう日々の、夕方の日程調整、総理を囲む場でもあなたは一切この話を雑談でもしなかったんですか、安倍総理に。おかしいじゃないですか。”江田憲司 衆院議員(無所属の会)
“一切お話ししたことはございません。”柳瀬唯夫 審議官(経済産業省)
“私に言わせれば、それはあなたが口にばんそうこうでもしていない限り、絶対それは言うんですよ。”江田憲司 衆院議員(無所属の会)
このようなやり取りを通じ、むしろ
総理と加計学園の深い関係が明らかになってきたといえるだろう。
このあと、加計学園問題に対して、総理は
「コメントする立場にない」「一転の曇りもない」などのフレーズを使いまわしながら、
コミュニケーションを徹底して拒否する戦術に出た。
いずれにせよ、5月までに加計学園問題のほとんどの真相は明らかになったと言えるだろう。
総理秘書官が加計学園関係者に面会していたことが明らかになったのだから。
高度プロフェッショナル制度を巡るデタラメさと党首討論における首相答弁が話題になった5~6月編は近日公開。
<文/平河エリ@読む国会 Twitter ID:
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