姿勢制御スラスターに発生したと考えられる“なんらかの異常”については、姿勢制御スラスターに供給されるエタノールの流量がなんらかの理由で少なくなり、エタノール(燃料)と液体酸素(酸化剤)の比率が変わってしまった可能性が高いとしている。
スラスターや配管は金属でできているため、燃料と酸化剤を最適な混合比で燃やすと、その熱で溶けてしまう。そのため、燃料の比率を大きくして――いうなればわざと不完全燃焼の状態にすることで、燃焼ガスの温度を下げ、溶けないようにしている(これは他のロケットでも行われている)。
しかし、燃料の流量が少なくなれば、意図せず最適な混合比に近づいてしまい、温度が上がってしまうことになる。
なぜ、燃料の流量が少なくなってしまったかについてはまだ調査中だとしているが、考えられる理由として、地上での燃焼試験時の配管の構成が、実際のロケットの配管と異なってことが挙げられるとしている。いくら地上試験では大丈夫だったとしても、実際のロケットの中と条件が異なっていれば意味がない。
この原因調査を受け、同社では本当にこの結果が正しいのかどうかを追求するため、検証作業を行うことを予定しているという。また、この原因以外の可能性も検証するとしている。
MOMO 2号機の打ち上げ 提供: インターステラテクノロジズ
「必ず高度100kmに到達し、宇宙の果てを目指す」
2号機の原因調査と並行し、同社はMOMO 3号機の開発も進めている。
この3号機では、原因である可能性が高いと考えられる姿勢制御スラスター周辺の設計変更を行うとしている。また、2号機では行っていなかった試験を追加することも明らかにされている。つまりスラスターの技術的な問題だけでなく、試験や品質の確保、担保といった、開発や打ち上げにおける考え方や方法、手順も見直すということである。
3号機の打ち上げ時期はまだ決まっていないものの、今回の報告書が公開されたのと同日に、3号機のクラウドファンディングも始まった。ちなみに支援の特典として、墜落した2号機の破片が用意されているところがなんともニクい。
3号機の打ち上げに向けて、同社ファウンダーの堀江貴文氏は、次のように語る。
「我々が宇宙への挑戦を始めてもう13年経ちました。世界的に宇宙空間と地球の境目とされる高度100kmには未だ到達しておりません。我々の実力不足を痛感しておりますが、諦めてはいません。必ず到達して宇宙の果てを目指そうと思います」
MOMO 2号機の想像図
<文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。著書に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・観測ロケット「MOMO」2号機打上げ実験報告書の公開 | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(
http://www.istellartech.com/archives/1797)
・MOMO3号機クラウドファンディング開始のお知らせ | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(
http://www.istellartech.com/archives/1783)
・MOMO2号機打上実験調査結果報告書(第1報)(
https://drive.google.com/file/d/1R5JJOge_8q8qpK-REootBdhEdupZ0vvV/view)
・続ける。宇宙への挑戦。みんなの力でMOMO3号機を飛ばそう! – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)(
https://camp-fire.jp/projects/view/90132)
・MOMO | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(
http://www.istellartech.com/technology/momo)