アーティストの手元に入るのは12% 変わらぬ音楽産業の構造
音楽産業全体の収益のうち、アーティストの手元に入るのは12%……。そんな調査結果が話題を呼んでいる。果たしてこの数字は多いのか? 少ないのか?
気になる調査結果を発表したのは、米金融機関シティグループ。昨年、全米の音楽業界全体の収益は430億ドル(約4兆8000億円)にも上るそう。同調査は音楽産業の傾向を次のように分析している。
“音楽産業は深い変化の最中にある。まず、消費者は購入するよりも、音楽を借りる傾向が強くなっている。次に(CDやレコードなど)フィジカルな音楽の凋落によってアーティストはツアーに出る回数が増え、コンサートやフェスティバルで大きく収益を上げている”
アメリカの音楽産業は’06年以来の高収益を上げ、音楽出版や著作権、ラジオやユーチューブでの広告は横ばい。コンサートなど消費者と直接結びつく分野では過去最高を記録したそう。
“消費者の購買手段が大きく変わるなか、業界の構造は堅固なままだ。レコードレーベルはレコードレーベルのままで、アップルやパンドラ、シリウス、スポティファイは流通を続けているだけだ。そして、ライブネーションやAEGといったコンサートプロモーターも、依然プロモーターのままである”
配信サービスなど、新規の事業者が参入してきても、根本的なシステムには変化がないという。しかし、今後、これらの事業者が直接アーティストの育成などに関わってくることがあれば、大きな転換点となりそうだ。
そして、気になるアーティストの“取り分”については、以下のような流れが起きている。
“総収益におけるアーティストの収入は小さい。’17年にアーティストが受け取ったのはたったの12%。収益のほとんどは流通プラットフォームの運営費に流出している。AM/FM/衛星ラジオ、インターネット配信といったもので、さらにレコードレーベルの支出も加わる。しかし、アーティストの収入は増加傾向にある(’00年はわずか7%だった)。収入の割合が改善したのは、音楽配信サービスによるものではない。むしろ、コンサートのおかげだ。音楽レーベルはアップルやスポティファイのような配信サービスのおかげであるように振る舞っているが、ほとんどはコンサートの収益によるものだ。コンサートの収入は特にアーティストを助けている”
チケットやグッズの売り上げがミュージシャンの大きな収入源になっていることは、これまでも指摘されてきたとおり。チケット価格の高騰やオークションサイトを使った転売競争、グッズの買い占めなど課題は多いが、アーティストにとっては貴重な命綱となっている。
また、アーティストの収入が増えたと言っても、ネガティブな面もある。12%という数値に関して、ある音楽関係者は次のように語る。
「アーティストの収益のなかでも、格差が生まれていると思います。もとより何十万枚も売り上げているアーティストにとっては、配信サービスは大きな収入源となります。しかし、小規模なインディー系アーティストはむしろこの仕組みのなかにいることで搾取されている面もあるでしょう」
5兆円近くの収益はどう分配されているのか
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