「星の王子さま」は、子どものために書かれた児童小説ということになっていますが、実際には、大人に向けて説かれた哲学の本です。星の王子さまの住んでいる星は、とても小さな星で、その星にはどこからともなくバオバブの木が生えます。バオバブの木は放置してしまうと根っこで星を破壊し、住む場所を奪ってしまう。だから、星の王子さまは普通の花なのかバオバブの木の芽なのかを見極め、バオバブだと分かったらすぐに抜くという作業を怠らず、星を壊さないように努力していたのです。
著者であるサン=テグジュペリは、
ファシズムを
「バオバブの木」として表現しています。つまり、星に住んでいると、どこからともなく
ファシズムの芽が出てきてしまうので、それを見つけたらすぐに抜かなければならない。放置してしまうと
ファシズムに支配されて人が住めない星になってしまうというわけです。
昨今の日本は、耳を澄ませば
ファシズムの足音が聴こえてきます。森友学園や加計学園の問題に代表されるように、総理大臣のやりたい放題が目立つ時代になってきています。官僚の人事も自由に決められ、安倍総理を守るために嘘をついた人が露骨に出世する時代になっています。しかも、総理大臣に寵愛されている杉田水脈議員が
「生産性のないLGBTに税金を投じるべきではない」と言ってみたり、日本維新の会の代表である松井一郎大阪府知事が
「税を納めているので生産性はある」と言ってみたり、税金を納められなくなった障害者や高齢者が、いつ迫害されるかもしれない危険な思想を覗かせています。
さらには、憲法を改正する際に
「緊急事態条項」を入れ、ヒトラーが悪用したドイツのワイマール憲法とまったく同じ仕組みを作り、日本でも合法的にファシズム路線を走れるようにしたいと考えているのです。麻生太郎財務大臣が
「ヒトラーに見習うこともある」と発言しているように、日本ではこっそり裏側でファシズムに憧れるバカタレが存在しているということです。そう、
「星の王子さま」で表現されている
「バオバブの木の芽」は、既に日本のあちこちで見受けられるようになっているばかりか、それを抜こうとする国民がほとんどいないのです。そんな折、糸井重里さんと仲良しの西畠清順という人が、著作権が切れたのをいいことに、
「嫌われ者のバオバブの木は寂しいんだ」と言い出し、あろうことか星の王子さまが西畠清順さんと思われるイラストの男と一緒に、バオバブの木にジョウロで水をあげている画を描き、ファシズムを世に広めるかのごとく、バオバブの木の苗を販売したのです。
「星の王子さま」を愛している者であれば、誰だって知っている常識を踏みにじり、作品の中で表現されている
「ファシズムを売る」という暴挙に出ているわけです。完全に気が狂っています。ファシズムを嫌う星の王子さまに何をさせてくれているんだという話です。
商品を見れば見るほど、
「星の王子さま」を使う必要はなかっただろうに、わざわざ使ったところは確信犯だと思いますが、この原稿を書いている間にも炎上が止まらず、
「#銀座ソニーパークださい」のハッシュタグが広がるばかりで、ソニーのイメージがどんどん落ちてしまうため、さすがのソニー企画も
「販売中止にしてもらった」とプレスリリースを出し、鎮火に走ることになったのでした。
美辞麗句を並べ、無意識を装って
「ファシズム」の種を広げようとした西畠清順さんや、それを応援している糸井重里さん。
「星の王子さま」で言うところの
「バオバブの木」が、まさに銀座ソニーパークに生えてきたという話です。
放置すればこの星に住めなくなってしまうということで、無意識を装って
「ファシズム」を世の中に広めようとする愚か者たちに、危機感を抱いた皆さんがTwitterに書き込んだり、電話での問い合わせるなどして、実際に引っこ抜くための行動を起こしてくださったことで、ファシズムの木が大きくなる前に消すことができました。
西畠清順さんに限らず、これからさまざまな形で出てくるであろう
「ファシズムの芽」を、僕たちはこれからも監視して、見つけたらすぐに抜かなければならないのだと思います。そして、これは世界的に愛されている文学作品に対する最大のテロ行為と言っても過言ではありません。こういう恥ずかしいことが次々に起こるようになってしまった
「モラルの劣化」は、最も深刻な日本の闇であると言えるかもしれません。どうしてこんな社会になってしまったのかを考えましょう。
<取材・文/選挙ウォッチャーちだい(Twitter ID:
@chidaisan)>
ちだい●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「
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