杉田水脈議員、ネオリベと反左翼の果てに辿り着いた“保守のジャンヌ・ダルク”

GEISTE
杉田氏

webで拡散した杉田氏をジャンヌ・ダルクへと加工したコラ

 杉田水脈議員は、公務員時代にサッチャーとNPMに傾倒していたことは前回言及したとおりだ。しかし、そんな杉田議員だが、公務員を辞めてから今に至る過程で、ネオリベ思想に加えて、「右派思想」へも歩み寄っていくことになる。(前回参照:杉田水脈議員「生産性」信仰の萌芽は、カリスマ公務員時代に傾倒したサッチャーとNPMにあり

「市民と取っ組み合い寸前」の意味

 8月3日の神戸新聞の報道「市民と取っ組み合い寸前 問題発言の杉田水脈議員、市職員時代から騒動」を受け、八幡和郎氏は杉田議員が公務員時代に起こした「取っ組み合い寸前」騒動の顛末について、杉田議員側の情報に基づいて以下のように記している。(参照:アゴラ「NHK、朝日、文春が揃って杉田水脈の“人権蹂躙”」

“保育所民営化を議論する健康福祉委員会で、中核派の活動家を支援するために、全国から仲間が集まり、傍聴席に座わり、ヤジを飛ばしていたので、係長だった杉田水脈が傍聴席に「ヤジは辞めてください!」と注意した。

すると、委員会終了後、傍聴席にいた活動家に囲まれ、「お前はなんの権限があってあんなことを言ったんだ!」「ルールを守らないから注意したのみ」「なんだと!貴様!」と、掴み合いになりそうなところを上司に押さえられたという事件のことらしい。”

 前回まで見てきたように新自由主義的な行政改革を信奉していた杉田議員の眼には、保育所民営化は絶対的に正しい政策として映ったはずだ。だがいくら傍聴者の不規則発言があったからといって、当時、自治体職員の杉田議員が委員長を差し置いてそれを注意するというのは、それ自体が明白な不規則発言であって、これも例によって何の擁護にもなっていない。

 この騒動と関係するかどうかは不明だが、杉田議員は公務員を辞めた直後の2011年より、関西を拠点に複数の民営保育園を運営する株式会社セリオの顧問を務めている。ちなみに同社は国家戦略特区の規制緩和により、17年10月に豊中市立ふれあい緑地に保育所を設置した事業主体でもある(参照:建設ニュース「あけぼの会とセリオを選定/民間保育所を誘致する設置・運営者の公募/豊中市」)、関西広域連合「特区について」)。

自称保守界のジャンヌ・ダルクへ

 2010年5月に公務員を辞職し、政治家への道を歩みはじめた杉田議員は、みんなの党の支部長を務めるかたわら当時吹田市議であった神谷宗幣氏が2010年に設立した政治団体である龍馬プロジェクトの初代女性局長(10年9月より)となり、同プロジェクト編・岬龍一郎監修『100人の龍馬―地域から政治改革のうねりをつくる』(PHP研究所、2010)には「未来をつくる仕事」と題する文章を寄稿している。

 2012年12月の衆院選で日本維新の会より立候補し初当選を果たす(比例復活)が、日本維新の会の分裂後、次世代の党の公認候補として迎えた2年後の衆院選では最下位落選、現在の地位は17年10月の衆院選で自民党の中国ブロック比例単独候補として当選したことによる。

 初当選前から現在まで関係の深い龍馬プロジェクトは保守色の強い団体であり、また次世代の党所属議員などからの影響もあって、杉田議員は次第に右派的な傾向を強めていったものと思われるが、彼女の初期のブログやSNS上の発言を読む限り、労働組合や市民活動、共産党などへの違和がときおり表明されている程度で、後年のような左派的なものへの苛烈な憎悪は見られない。

 杉田議員とは初当選同期の河野正美元衆院議員は『週刊文春』の取材に対し、杉田議員から「維新の先輩たちから言われて、予算委員会で右寄りの質問をしなければならない」と相談を受けたと証言している(『週刊文春』8月9日号)。おそらくこれは杉田議員が慰安婦問題を初めて取り上げた13年4月1日の予算委員会のことだろう。

 杉田議員が右派的言説に過剰に傾倒していくのはちょうどその頃からで、翌14年からは『JAPANISM』『Will』『正論』といった保守論壇誌に露出するようになり、アパ日本再興財団主催の「真の近現代史観」懸賞論文で杉田議員は最優秀賞を獲得することになる。その後の活躍は周知の通りで、彼女は保守派のアイドルとして祭り上げられてゆき、味わい深いコラージュ画像まで出回るようになる。



“日本の政治を前に進めましょう。時計の針を巻き戻し、20世紀に戻るのは民主党政権で懲りたはず。
台湾やインドの動きに呼応して、香港にもエールを送り、新しい時代を動かしましょう。”

 ただし元の画像はエリザベス1世の伝記映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(2007)のワンシーン、また画像に書き込まれた「FOLLOW ME!!」の元ネタは『ジャンヌ・ダルク』(1999)でミラ・ジョヴォヴィッチ演ずるジャンヌのセリフであるから、カオス過ぎてもはや何が何だかわけがわからない。ただそうした点も含め、この画像には自称保守界隈の杉田議員に対する得体の知れない期待感が込められていることは間違いなく、評論家の西村幸祐氏も意気揚々と同画像を拡散している。

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新自由主義と反左翼の果てに

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