だが、『神奈川新聞』の記者が「どのような企業が(ISDEF Japanに)出展し、どんなものを展示するか把握しているか」ということを聞くと、福田市長は「この企業がこういうものを売っているからダメというのはものすごいレッテル張り」「(展示内容について)私が全部把握するんですか?」と開き直った。
「市の条例で、とどろきアリーナの設置目的はスポーツで使うことを想定しているのに、軍事関連で使われることは条例に抵触しないか」との質問に対しては、福田市長は鼻で笑いながら「どこが抵触するんですか? 全く問題ないでしょう」と言い切った。
さらに「市民側から、市の核兵器廃絶平和都市宣言に反するのではないかとの指摘があるが、それに反しない根拠は何か」と『神奈川新聞』の記者が聞くと、福田市長は「このイベントが何に違反するのでしょうか」と聞き返す有様だった。
川崎市長定例記者会見の動画ではISDEF Japanに関する質疑は36分40秒くらいから行われている。
https://youtu.be/4ltXOA5unkc
筆者も、とどろきアリーナをISDEF Japanに貸し出すことは外交上・人権上問題あるのではないかと川崎市長宛てに問い合わせ、一週間ほど待ったものの本稿執筆までに返答はなかった。
とどろきアリーナをISDEF Japanに貸し出すという川崎市の判断に対しては、中東地域に関わる専門家からも抗議の声があがっている。東京大学の長沢栄治教授や、法政大学の奈良本英佑名誉教授らは「ISDEF Japan 2018に反対する研究者・ジャーナリストの緊急声明」を発表。その中で、以下のように問題点を指摘している。
ISDEFは「国土安全保障およびサイバーセキュリティー分野における最新の技術と機器の紹介」が目的であって「兵器の展示・実演は行なわない」としています。
しかし、「兵器の展示がない」という弁明は、この見本市の開催をなんら正当化しません。
第一に、参加企業と展示品は未確定とされており、川崎市など施設の責任者も展示内容を把握していません。これまでの見本市の実績から見ても、現時点で兵器の展示可能性が排除されているとは言えません。
第二に、「安全保障・セキュリティ」の装備や機器は、技術的にも兵器と深く関わっており、また、軍事システムの一角をなすものです。兵器と兵器でないものとのあいだの線引きは曖昧かつ恣意的なものにすぎません。
さらに私たち、中東地域の研究や報道に関わる者としては、イスラエルの兵器はもちろんのこと、警備システムやハッキング/ウイルス対策製品のような「セキュリティ」技術が、パレスチナの軍事占領や市民の差別的監視などと深く関わる形で開発されてきたものであることを看過できません。