「叩き易き」を叩くだけの空気が蔓延する社会。なぜメディアも検察も「一番大きな疑惑」を追及しないのか

菅野完

写真/時事通信社

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なぜ検察もメディアも、「一番大きな疑惑」を徹底追及しないのか?

 テレビのワイドショーは日大の田中英寿理事長とボクシング連盟の山根明会長の話でもちきりだ。とりわけボクシングの山根会長は、伝えられるその言動が、あまりにも典型的な「クソオヤジ」のそれであり、こぞって叩きやすいということもあるのだろう。

 だが五輪選手の育成に関する助成金の使途に疑義が出ている。「けったいなオッサンの巻き起こした珍騒動」で処理しきれない側面が確かにあるのだ。8月3日金曜日には、林芳正文部科学相が「事実であれば誠に遺憾」と苦言を呈する事態にまで発展した。

 しかしこうしてワイドショーや雑誌の誌面を、アメフトとボクシングの話題が埋め尽くしている状況に胸を撫で下ろしているのは、当の文部科学省ではあるまいか。なにせ、7月のうちに2人もの文科省の官僚が逮捕され、それに前後して、2回も東京地検特捜部による強制捜査が実施されているのだ。まさに前代未聞の事態。アメフトもボクシングも話題にならなければ、今ごろこちらのほうが世間の耳目を集めていたであろう。

 報道されるところによると、地検特捜部は、戸谷一夫事務次官を含む複数の文科省幹部が、贈賄容疑で逮捕された元コンサルタント会社役員から繰り返し接待を受け便宜を図っていたものとして、捜査を続けているとのことだ。

 物書き、しかも事件モノの物書きの端くれとして、この件も取材と調査を進めているが、やはりどうしても解せないことがある。確かに、嫌疑の対象となっている接待は異常な頻度と金額で繰り返されており悪質ではある。しかし、その見返りとして提供された「便宜」の実態が極めて曖昧なのだ。接待をした側が何を得たのか、どこに利得があったのかが一切見えてこない。

 こんなことで贈収賄が成立し逮捕や強制捜査が行われるのなら、安倍晋三に飲食やゴルフの接待を繰り返していた加計孝太郎はどうなのか。あるいは加計のことを「僕のビッグスポンサー」と吹聴していた安倍はどうなのか。こちらのほうが「大学設置認可」という見返りが鮮明ではないか。

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我々は山根会長を批判する資格などないのかも
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