※写真はイメージです SergeyMironov / PIXTA(ピクスタ)
今は所有するのではなく何でも共有する
「シェア時代」だ。部屋もシェアする。車もシェアする。もちろん自転車だってシェアをする。環境の保護や、都市での渋滞や騒音、大気汚染の緩和を目指すために、
シェアサイクル事業が世界的に広がりを見せている。
日本でもIT企業を中心に大手企業の参入が相次いでいる。
NTTドコモや
ソフトバンクといった大手通信キャリアは、国内外のITベンチャーの参入に先駆けてシェアサイクル事業に取り組んできた。ソフトバンク子会社の
OpenStreetによる「
HELLO CYCLING」は昨年
セブン-イレブン・ジャパンと協業を発表し、2018年度中にセブンイレブン1000店舗に駐輪場を設置する予定だ。
ヤフーもOpenStreetに出資する形でシェアサイクル事業に参入した。
LINEは中国のシェアサイクル大手
「Mobike」と手を結び、
メルカリは「
メルチャリ」を、
アパマンショップは「
ecobike」を開始した。日本でのシェアサイクル普及の課題は駐輪場の数の確保。それも利用者が多ければ解決される。
そして今、元来あまり自転車を移動手段として使う人が少なかった
韓国でも、空前の自転車ブームが起き、シェアサイクル事業も活発さを増している。しかし、そんな盛り上がりを見せる韓国のシェアサイクルブームに冷や水が浴びせられた。
韓国では今年9月から施行される自転車の
ヘルメット着用義務化を前にして、シェアサイクルサービスを運営する地方自治体は頭を抱えている。ヘルメットの供給費用の問題と、不便さと、衛生問題からシェアサイクルの利用が激減するのではないかと懸念されているのだ。
ソウル市は20日、汝矣島(ヨイド)エリアの「
タルンイ」(ソウル市のレンタサイクル)貸出所30か所に試験的にヘルメット500個を設置した。
この地域は出退勤者と旅行客などの「タルンイ」利用客が多い地域だ。市はこれから1か月ヘルメットの利用率と紛失率、満足度などを調査してソウル市全域の2万台全てにヘルメットを設置するのか決める方針だ。
タンルイのサイト
ヘルメットはただ供給すれば良いだけではない。自転車本体よりも人手が必要だ。一番の問題は
衛生。夏はたくさん汗もかくので菌が発生し悪臭も漂ってくる。ソウル市は週に3回以上消毒、悪臭がひどいヘルメットは回収し脱臭する計画だ。この過程にはすべて追加費用が発生する。
だがこのように管理をしても市民たちが利用するかどうかはわからない。「タルンイ」利用者のイ某氏(31歳)は「夏の酷暑の中、他人の汗が染みついたヘルメットをかぶりたくない。自転車のカゴに入っているヘルメットは手にも取らなかった。これからもヘルメットは使わず乗るつもりだ。予算の浪費にしか見えない」と語った。
一個当たり
1万5千ウォン(1500円)するヘルメットの
紛失も懸念されている。
ヘルメットの紛失を防ぐためには自転車本体に連結させなければならないが、この場合、連結する紐やチェーンなどによる事故の危険性も出てくる。
チャンウォン市の関係者は「ヘルメットを自転車に紐で結びつけると、利用者の首にひっかかる事故の危険性があるので、前のカゴに入れておく方法しか取れない。この場合ヘルメットの紛失を防ぐことが出来ない」と言っている。
ソウル施設公団関係者も「紛失を防ぐためにヘルメットにGPSを搭載する事が出来るが、コストがあまりにもかかり過ぎる」とお手上げ状態だ。
一番深刻な問題は、ヘルメットの着用義務により、自転車の利用者数が激減する可能性があるという点だ。ソウル市の関係者は「ヘルメットの着用義務は国内のいろんな地域が頑張って起こした自転車ブームを衰退させる」としている。
この問題で地方自治体からは不満が噴出している。
ヘルメット着用を義務化した改正道路交通法は、現場の問題を考慮しない典型的な「机上の空論」というわけだ。
水原市の関係者は「自転車が移動手段の30~40%を占めるオランダなどの欧州の国では自転車の利用を妨げるとしてヘルメット着用を義務化していない。自転車を安全に乗れる環境を作らずに自転車利用者に安全責任を課している。将来、歩行者にも安全ヘルメット着用が義務化されないか憂慮している」と指摘した。
改正道路交通法によって市民らは9月28日から原則として、自転車を乗るときにヘルメットを着用しなければならない。ヘルメットを着用せず自転車に乗っても罰則はない。だが、ヘルメット未着用は違法なので事故が起こったら自転車利用者側の責任は重くなることが予想される。ヘルメットがないシェアサイクルを乗って事故が起きれば、サービスを提供している地方自治体に責任が及ぶ可能性も出てくるのだ。