スペインのタクシー業界、UBERなどの配車アプリへの規制強化を求めてスト断行。長引く可能性も

スペインの首都マドリードで、配車サービスへの規制強化を求めて道路を封鎖するタクシー(スペイン・マドリード) AFP=時事

 7月25日にバルセロナで始まったタクシー運転手のストライキはマドリード、バレンシア、サラゴサ、アリカンテなどに波及しており、観光シーズンに入る中、大きな影響を与えている。  このストライキ、そもそもの理由は、運転手付きの自動車配車サービス(VTC)ウーバー(Uber)とキャビファイ(Cabify)に対し営業規制強化を要求したタクシー運転手のストである。  ウーバーは世界的に既に知られているが、キャビファイというのはスペインで誕生したウーバーと同じようなサービスを提供する配車サービスである。マドリードで2011年に誕生したのであるが、スペイン以上にラテンアメリカで急速な成長をしている。(参照:「El Pais」)

大規模ストライキに突入した理由

 今回、バルセロナのタクシー運転手がストライキの実施に踏み切った発端となったのは、次のようなできごとがあったからだ。  6月26日にバルセロナ市議会で、ウーバーとキャビファイのバルセロナ市内での配車サービスを規制する法案を決め、今後の彼らの営業には新たにメトロポリタン・タクシー協会からの営業許可証が必要だということを決めたのである。同法案が施行されれば、メトロポリタン・タクシー協会がウーバーとキャビファイに対して、この新しい営業許可証の発行を制限させて現在バルセロナ市内で営業している1000台余りのウーバーとキャビファイを400台まで減らすことになる。また、この許可証なく営業した場合は4000ユーロの罰金を科されることになる。(参照:「El Pais」、「El Mundo」)  当然、バルセロナのタクシー業界はこの法案を、もろ手を挙げて歓迎した。急激に支持率が低下しているというバルセロナのアダ・コラウ市長にとっては、来年の地方選挙に向けて支持率回復の一助になる政策だったのだろう。  ところが、この決定に国家公正競争市場委員会(CNMC)が待ったを掛けたのである。  そして、カタルーニャ州の最高裁に市議会の決定は違法であると告訴したのである。違法であるという理由は、運送業界の規制に関しての決定は法的にスペイン政府の管轄になるもので、市政はそれに関与できないとされているからである。  結局、7月19日にカタルーニャ最高裁はCNMCの言い分を認め、バルセロナ市議会での決議案を違法としたのである。この判決を不服としたバルセロナのタクシー業界はスペイン政府の振興省の運輸部の高官レベルと交渉を進めたが、彼らが満足できる回答を得ることができず、遂に25日からストを決行することを決めたのである。(参照:「El Independiente」)
次のページ
主要都市のタクシー運転手がストに参加
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会