バルセロナのタクシー業界の決定にまず追随したのがマドリードのタクシーである。その後、バレンシア、アリカンテ、サラゴサといった主要都市のタクシー運転手がそれに同調する形でストに入った。
というのも、2015年から基本法となっているのはタクシー30台に対して1台のVTCという比率で認可して行くということになっている。ところが、スペインの現状はタクシー65277台に対し、VTCは9366台存在しているという。即ち、後者1台に対し前者7台という割合で、1対30の比率は守られていないのだ。
中でもマドリードではウーバーとキャビファイが4308台と断トツで、バルセロナは1363台が営業しているという。
しかも、2009年から2013年の間に当時のサパテロ首相政権下で法律の盲点をついてVTCの認定車が増え、その数は10000台。その正式認可が順次進められており徐々にそれが市場で営業できるようになっている。それはタクシー業界にとってさらに不利な状況に置かれることを意味する。(参照:「
El Pais」)
7月30日から振興省の運輸次官ペドロ・サウラとタクシー連盟とVTC連合との間で別々に協議が進められているが、タクシー連盟のほうでは政府からの具体的な改善プランが明確にされていないとしてストの続行を決めている。
しかし、スト期間中は消費者もタクシーを利用できず困っているが、タクシー運転手のほうもスト実施中は売上がなく、彼らにとっても損害は深刻である。そのような事情から今後もストを続行するか否かタクシー組合で会合を開かれる予定だという。
一方、スト期間中にVTCは100台の車が破損の被害を受け、1台は銃弾が車の窓ガラスを壊すという事件も起きている。
6月に発足した社会労働党の新政府は他党からの圧力もあって、タクシーとVTCの認定許可を振興省ではなく各自治体に一任する方向にある。バルセロナの場合はバルセロナ市議会で決定された内容が認定の基準になるということである。
ところが、問題は自治体がその認定が出来るようにする為の基本法の改正が必要であるが、6月にラホイ前首相に対し内閣不信任案を提出して発足した社会労働党のペドロ・サンチェス首相が率いる与党は84議席しかないということ。定員350議席で同基本法の改正に必要な過半数の議席を確保するには自党の議席数以上の議席数を他党から集めねばらないとう困難を抱えているのである。
タクシー業界に味方しているポピュリズム政党ポデーモスの67議席に加え、カタルーニャ左派共和党の議席などをかき集めても160議席しかならない。176議席になるにはあと16議席が不足しているのである。野党に回ったラホイ前首相の国民党やカタルーニャの政党シウダダンスからの支持は全く期待できない。サンチェス首相の右腕でバレンシアが選挙地盤の振興相ホセ・ルイス・アバロが今後どのようにして不足している票をかき集めるのか腕の見せどころであるはあるが難航が予想される。
夏休みを前にこの問題の法的解決は10月まで持ち越される可能性が高い
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。