介護現場の人手不足と負担軽減を図るべく、政府は2013年度より「ロボット介護機器開発・導入促進事業」を実施している。同事業が掲げる「ロボット技術の介護利用における重点分野」には、移乗介護機器も重点開発分野の一つに挙げられている。また、政府は今年2月16日に閣議決定した「高齢社会対策大綱」で2015年、24.4億円だった介護ロボットの市場規模を2020年には約500億円に成長させるとする野心的な目標を掲げた。市場規模拡大には全国津々浦々の介護施設でのロボット導入の促進が欠かせないが、なかなか思うように進んでいない。
こうした状況を今回の聞き取り調査を行ったライト氏は、ロボティア編集部の取材に対し、「ロボットのような新しい技術を導入するということはスキンシップを交えた介護、介護職員と高齢者との関係などなど、これまでの既存の介護在り方全体を変えるということだ。ロボットを導入して、今の介護の枠組みがそのままであるとは考えてはいけない。ロボット導入が介護現場に与える影響について今一度考えるべき」と述べた。
また、ライト氏は「介護ロボットの開発者はもっと介護施設に出向き、介護職員や入居している高齢者と対話し、現場のニーズが何であるかをきちっと把握するようにすべきだ。私はロボット開発者が介護職員や高齢者と殆ど接触していない事実に驚いた」とも述べ、介護ロボットの開発者に対し、もっと介護現場の声を反映させるよう訴えた。逆に介護職員も介護ロボットの開発段階からもっと関われる仕組みを作れば、「彼らは開発された介護ロボットが現場で活用されることにより貢献するだろう」と述べ、双方が密に協力しての介護ロボット開発が望ましいとした。
職員の8割以上が背中・腰の痛みを感じているのに、なかなか「Hug」が受け入れられない事例も単に、一ロボット介護機器の受け入れが現場で拒まれていると捉えず、「Hug」を含む様々な介護ロボットがどのようにすれば、入居者とのスキンシップや“ふれあい”などを重視する介護職員に快く迎えられるのかを今一度徹底的に考えてみることも必要なのかもしれない。
<取材・文/アウレリウス>
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