「入居者の移乗にHugを使いたいか?」の問いには回答者20人のうち、7人が「使いたくない」と回答。6人がまだ分からないと回答。「使いたい」と答えたのは4人で3人が無回答だった。
ライト氏の聞き取り調査によると、腰痛から職員を守ってくれる「Hug」だが、職員の多くが「Hug」の使用習得に時間を取られると考えたという。また、介護職員の中には、「人生の大先輩である入居者に対し、機械を使うのは失礼にあたる」と回答した人もいた。
「腰痛に苦しむ人は移乗サポートロボットを使えばよい。でも、私は人と人の関わり、ふれあいを大事にしたい。ロボットに頼るようなことはしたくない、自分の手で介助したい」と記述回答した職員もいた。唯、欧米の介護現場とは違い、ロボットの導入が自分たちの職場を奪うとの回答は皆無だったという。
同ホームでは製造元の株式会社FUJI(愛知県知立市)の協力を得て、4月から5月半ばまで6週間、「Hug」を試験的に介護現場に導入した。持ち上げられる時に痛みを訴える入居者がいたりする一方で、数は少ないが、「Hug」を使う移乗を「快適」と捉える入居者もいた。ひるがえって、介護職員の多くは、「時間がない。機械の使い方を習得する時間を割くことができない」と回答した。興味がないと回答した職員もいた。「たとえ身体的に楽になってものんびり使うことができない」ことに不快感を示した職員もいた。
ライト氏は「時間がない」を理由に新技術の導入が拒否され、現状維持の方向に職員が向かう傾向があるとした。しかし、「Hug」の導入に職員が消極的な理由は複雑だ。移乗動作にロボットを導入すれば、介護職員が大事と考える「スキンシップ、冗談を言い合ったりして打ち解ける」するなどの入居者との“ふれあい”の部分が失われることを介護職員が最も恐れているのではないかとライト氏は分析する。