また、すでに日本でも一部で報道され始めているが、欧米メディアからも厳しい意見が飛び出している。アスリートや観客の体調も気になるところだが、日本の五輪関係者は“空約束”がしっかり報道されていることを認識するべきだろう。
イギリスの『
ガーディアン』には、「日本の熱波:記録破りで2020年五輪への懸念が高まる」という記事が。東京五輪スポークスマンの意見として、次のようなコメントが載っている。
「すべてのアスリートが安全に自分のベストを尽くせるよう、試合を主催するという目標は変わりありません」
夏場の開催については、「決まったことだから仕方ない」という意見もあるが、そもそも日本側からIOCに対して開催時期を再検討する動きがあったのかどうかも不明だ。膨れ上がる予算や、技術的な面を考えても、早い段階で要請する機会はいくらでもあったはずだ。
たとえば、東京五輪の2年後、2022年にはカタールでサッカーのW杯が開催される。東京以上の高温で開催できるのかと心配する声も多かったが、こちらは11月21日から12月18日と冬に移行することが決定した。多くの代表選手が所属する欧州各国のリーグはシーズン真っ只中となるが、それを押し切ってコンディションを優先した形だ。
ネット上では「時差の関係で欧米の放映時間に合わせなければいけない」と諦めにも近いコメントが散見されるが、そういった声は日本がイニシアチブを握れていないことを認めていることにほかならない。
先に紹介したとおり、外国人からは夏場に開催することに対して否定的、それどころが批判的な声が多いのが現実だ。また、『ガーディアン』の記事を含め、各種メディアでは’64年の東京五輪が10月に行われたことも取り上げられている。開催時期を検討するに足る理由、そして理解はあったわけだ。しかし、面子を優先して“やせ我慢”した結果が、今のような状態なのだ。
『
ウォールストリート・ジャーナル』は猛暑を避けるため、「いくつかの種目で開催時間が変更された」ことを伝えているが、記事を読む限り、批判的なニュアンスは皆無だ。
果たして世界中が「大丈夫か?」と心配するなか、いったいいつまでこの“やせ我慢”は続けられるのだろうか? しわ寄せを喰らうのは、猛暑のなか命の危険を冒してプレーするアスリート、そしてさまざまな負担を強いられる庶民だ。
ごまかしが通用するのは、国内だけ。世界が注目するなか、もしトラブルが起きてから反省したのでは、余計に恥をかくということをいい加減学ぶべきではないだろうか?
<取材・文・訳/林泰人>