スペイン語圏でよく言われる「日本式ストライキ」って知ってる? その言葉の斜め上行く定義に驚愕

イラスト/いらすとや

 スペイン及びラテンアメリカの一部で「日本式ストライキ(Huelga a la japonesa)」というのが1980年代から良く聞かれるようになっている。 「ウエルガ・ア・ラ・ハポネサ」と発音するのであるが、これ実は、日本でもこんなことをする労働者はいないという「日本式」である。日本人の勤勉イメージを反映させて彼らが「勝手に創作した?」と思われるストライキなのだ。

「働きまくって経営者に損させる」!?

 その「日本式ストライキ」の内容たるや、なかなかぶっ飛んでる。  スペイン語圏における「日本式ストライキ」の定義は、「日本の労働者は規定以上の労働を行って、過度の生産をすることで企業は過剰在庫を抱えるようになる。それによって、供給過剰となり商品の価格が下がる。その一方で労働者には規定以上の労働で残業手当の支給が必要となる。その結果、利潤の減少を生むことになる。そのようにして、労働者は経営者を苦しませるようにして労働者の要求を経営者が呑むようにする」というものである。  なかなかに斜め上を行く内容だが、なんとなく、スペイン語圏における「ニッポン人の労働者」像が伝わってくる。  それにしても、果たして、このような定義で日本でストが行われたたことがあるのであろうか?

スペイン各紙も「日本式ストライキ」の謎に迫る

 スペインの日本大使館もアジア会館(日本などアジアの文化を普及させる組織)も<日本式ストライキは作り話だ>と「El País」紙の担当者に回答したという。  また、今年3月7日付の『Las Provincias』紙は「日本人は日本式ストライキをやったことは一度もない」と報じている。  いや、ある意味長時間労働は強いられているが、それが経営者にとって逆にダメージを与えるような話にはなっていないのだが……。  企業情報電子紙『muypymes』(3月8日付)によれば、トヨタのジャスト・イン・タイムのような生産システムのお陰で日本人の勤勉さが世界で注目されるようになった70年代から日本式ストライキが話に出るようになったと指摘し、そこから、勤勉な日本人がストライキをやったら過剰に働いて上述したような利潤減少に繋がるような事態になるという「話のオチ」がスペインやラテンアメリカで「日本式ストライキ」として流布されるようになったと分析している。  日本人は勤勉だという概念はスペインでもラテンアメリカでも定着している。更に言うなら、スペイン人の間では「日本人は頭が良い」という概念が一般化している。実際には日本人も十人十色なのであるが、スペイン人の間では日本そして日本人に関して評判はとても良い。
次のページ
スペインでは本当に実践した労働者の例も!
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会