元日経記者が500万円の大損をしてやっと気づいた、元本割れを避け、確実に年1割の利益を得るための「心構え」
③専門家や一般の人たちがどう予想しているかを知ることで、「独りよがり」を避ける
証券会社や機関投資家(生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、ヘッジファンドなど)などの専門家でさえ、長期的な展望は別として、直近の株価動向を予測することは難しいものです。
テレビ東京が毎朝、月曜日から金曜日まで放送しているニュース番組「モーニングサテライト」では、専門家が「今日の株価予想」をしています。当たる場合もありますが、外れる場合もかなりあります。それでも私が毎朝、彼らの予想を見るのは「どのような理屈、判断で今日の株価を予想しているのか」、その理由を知りたいためです。
外れる場合があるのに、なぜ専門家の予想を毎日チェックするのかというと、株価予想における「独りよがり」を避けることができるからです。株価の動きを予想する時に肝心なことは、自分がどう予想するかではなく「世間一般の人々がどのように予想するか」を予想することが重要なのです。
株価は、世間の大多数の人が「上がる」と思ってその株を買えば、実際に上がります。「下がる」と思ってそれを売れば下がります。世間の多くの人がどのような予想を持っているかが、一番重要なわけです。自分勝手な予想を抑えて「世間一般の予想」を冷静に予想することが、売買での勝ちにつながります。
④意見を参考にしつつ、100%は信じない。「専門家でも予想が難しいからこそ、素人にもチャンスがある」と考える
その意味で、専門家や一般の人たちがどのような材料を重要視して予想を立てているかを知ることができる番組のチェックは、大いに役立ちます。企業の技術開発を特に重視する専門家や、情報産業など特定の業界に精通した専門家、あるいは海外市場の動向を常に気にしている専門家など、いろいろな専門家が番組に登場します。
中には「理路整然と間違っている」専門家もいます。彼らの成績を採点しながら楽しむのも、面白いと思います。「世の中の人は、どういう材料やデータを使って株価を予想しているのか」ということが実際にわかり、大いに勉強になります。
毎日の株価予想をしている専門家に聞いても、短期的な株価動向を正確に言い当てる確率は「フィフティ・フィフティ(50対50)だ」と言っています。「それでは、ズブの素人とあまり変わりがない」と言えばその通りです。正確な予想が難しいからこそ、素人にもチャンスがあるのです。市場は複雑な人間心理を反映する場であるため、損をする人、利益を得る人が出てくるわけです。
⑤株価のわずかな上下を、日常生活では味わえない「わくわく感、スリル」として楽しむ
長期的な株価は経済のファンダメンタルズ(景気や雇用、物価、為替、国際収支など、経済の基礎となるデータ)の影響を大きく受けるので、上がるか下がるかを予想することはそれほど難しくはありません。しかし、直近の今日明日の株価などを正確に予測することはとても難しいことです。
この1年を振り返っても、「アメリカファースト」を掲げて米トランプ大統領が毎日のようにつぶやくツイッター発言、北朝鮮をめぐる地政学的リスクなどがありました。国内に目を転ずれば、森友学園への国有地売却問題や家計学園グループの獣医学部新設計画をめぐる問題、それらに関連した官僚の忖度と国会空転などさまざまなニュース、情報であふれています。
これらが株価にどのような影響を与えるかを総合的に判断し、読み解くのは至難の業です。というよりも、不可能といった方がよいかもしれません。
市場参加者の多様な見方、読み方、判断が最終的には株価に投影されるわけです。自分の見方通りに上がれば「してやった」とうれしくなるし、外れて下がれば「なぜだ」と不機嫌になります。たかが価格が数円上がったり下がったりするだけですが、お金がかかっているだけに、日常生活では得られないわくわく感、スリルが得られます。
⑥最初から「大儲け」は狙わない
株の世界では、ある上昇局面で大儲けをしても、次の下降局面で大損をしてしまい、結局大負けしてしまうケースが頻繁に見られます。一昔前の投資家は見栄っ張りの人が多く、儲けた時の話は得意げに自慢しますが、損した話はひたすら隠すため、成功話も「話半分」で聞く必要があります。
石橋をたたきのネット株投資術は、そんなに派手な儲けは期待していないので、見栄をはる必要がないので気楽にできます。基本は、リスクの大きい信用取引ではなく、リスクの少ない現物取引のツボをまずマスターするということです。
◆石橋叩きのネット株投資術第7回
<文/三橋規宏>
みつはしただひろ●1940年生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学教授、同大学名誉教授、環境を考える経済人の会21事務局長等を歴任。主著は『新・日本経済入門』(日本経済新聞出版社)、『ゼミナール日本経済入門』(同)、『環境経済入門』(日経文庫)、『環境再生と日本経済』(岩波新書)、『サッチャリズム』(中央公論社)、『サステナビリティ経営』(講談社)など。
経済ジャーナリスト。1964年、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、千葉商科大学政策情報学部教授。2010年から名誉教授。専門は日本経済論、環境経済学。編著書に『新・日本経済入門』(編著、日本経済新聞出版社)、『環境が大学を元気にする』(海象社)など多数。『石橋をたたいて渡るネット株投資術』(海象社)を8月9日に上梓。
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この連載の前回記事
2018.07.19
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