有人宇宙船の開発を進めるインドと、独自の有人宇宙計画を持たない日本。明暗を分けた「10年」

独自の有人宇宙計画をもたない日本

 現在、有人宇宙船を保有しているのはロシア、米国、そして中国の3か国。欧州は宇宙船こそもっていないが、米国の次期有人宇宙船の半分の開発を担当しているため、間接的に保有することになる。もしインドが有人宇宙飛行に成功すれば、こうした国々と肩を並べることになる。  一方で日本は独自の有人宇宙船をもっていないばかりか、その開発も行われておらず、将来的に保有する計画もない。  1980年代ごろまでの日本は、ロケット開発において米ロなどから遅れていたため、ロケットの性能からして宇宙船を打ち上げることができなかった。そのため、日本人宇宙飛行士を育成しても、米国やロシアの宇宙船に乗せもらって打ち上げるしかなかった。  その後1990年代には、日本もロケットの大型化、高性能化が進み、それを受けて日本から小型のスペースシャトルを打ち上げる計画が立ち上がった。  この計画は無人機だったが、ゆくゆくは日本から有人宇宙船を、という機運は高まりつつあった。  しかし、90年代後半にロケットの打ち上げ失敗が相次いだことなどから、無人シャトル計画は凍結。2002年には内閣府が「有人宇宙活動について、我が国は、今後10年程度を見通して独自の計画を持たない」と決定するほど、独自の有人計画を忌避してきた。  その後、現在に至るまで、宇宙船をもつという具体的な計画はない。2000年代から有人宇宙船を開発し続け、10年かけてようやくここまできたインドに対し、日本はこの10年、有人分野においてはくすぶり続けてきたのである。

日本人宇宙飛行士は現在、もっぱらロシアの宇宙船で宇宙に行っている (C) NASA

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有人は必要か、不要か。十分な議論すらない日本
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