このストレステストの結果を受けて、各行が株主還元策を獲り始めた。
◆JPモルガン・チェース
JPモルガン・チェースの取締役会は、2018年7月1日から始まる2018年の第3四半期に四半期普通株式配当を0.80ドル(現行の0.56ドルから43%上昇)に増やし、2018年7月1日から2019年6月30日までの1年間に207億ドルの株式の買い戻しを行う。(参照:
JPMorgan Chase Plans Dividend Increase and $20.7 Billion Capital Repurchase Program)
JPモルガン・チェースの配当利回りが3%を超えてくることが予想される。7月20日時点、配当利回りは2.24%である。(参照:
Yahoo Finance)
◆ウェルズ・ファーゴ
ウェルズ・ファーゴは、第3四半期の配当金を1株当たり39セントから1株当たり43セントに10%増やすと発表した。また、2018年第3四半期から2019年第2四半期の間に、自社株買いを最大245億ドルに引き上げる予定であると話した。(参照:
Wells Fargo to Raise Quarterly Dividend to 43 Cents a Share, Boost Buybacks)
2016年9月から、ウェルズ・ファーゴは顧客に無断で数百万件の口座(預金、クレジットカード他)を開くなど、組織ぐるみの不正行為が次々と発覚し、2月2日、米連邦準備理事会(FRB)はウェルズ・ファーゴに対して、リスク管理体制を立て直すまで資産の拡大を禁じるという業務是正命令を出していたため、ウェルズ・ファーゴが増配し、自社株買いが認められたことに対して、筆者は意外感を持った。
◆シティグループ
シティグループは、2018年7~9月期から普通株の配当を1株0.32ドルから0.45ドルへと41%増やす。また、7月からの1年で220億ドルの自社株買いを実施する。(前期は156億ドルの自社株を実施した。)シティグループは、全株式の10%に相当する自社株買いを実施することになる。(参照:
Citi Announces 2018 Planned Capital Actions)
2008年の金融危機(リーマン・ショック)から10年経過した。米国銀行株の底値は、2009年3月であったのであるが、当時に比べれば、確かに、米国銀行株は騰がっている。しかしながら、金融危機の頃に米国銀行株を買った投資家は、当時想定した株価に現在届いていないと感じているのかもしれない。例えば、シティグループの株価は、過去5年間を取ってみると、+29.7%である。同期間のS&P500の65.1%に劣後している。
一方、米国銀行株の配当は確実に増えている。例えば、シティグループでは、2018年7~9月期から普通株の配当を1株0.32ドルから0.45ドルへと増加する予定であるが、金融危機の2009年1月から2015年1月まで四半期配当は僅か0.01ドルだったのだ。近い日に配当利回りが2%を超え、将来3%を超えてくることも考えられる。また、自社株買いの規模も拡大している。
今度こそ、米国銀行株は騰がるか? 忍耐を持って、騰がる日を待ちたい。
<文/丹羽 唯一朗>