親や同伴者なしでアメリカを目指す中米の若者たち。不法移民を国境で追い返すだけでは何も変わらない

(c) Tomas Castelazo, www.tomascastelazo.com / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

 トランプ政権による不法移民の親から引き離された子供の数は3000人とも4000人とも言われている。米国の移民局の方でその数を完全に掌握出来ないでいるというのが現状である。(参照:「La Jornada」)  この非道とも言えるトランプ政権の方針に社会から批判が相次ぎ、連邦地方裁は7月26日までに親と再会させることを命じている。しかし、これだけ多くの幼児を指定された期日までに親に引き合わせることは物理的に難しいように思われる。また、幼児の中には親と数か月離れていた影響で親を認知出来なくなっているケースもあるという。そして、それまで傍にいて幼児を介護していた婦人の元に戻ることを願う子供もいるという。正に親子の二重の悲劇となっているのだ。(参照:「Clarin」)

「子供だけ」で国境を越えようとする事例も増加

 親子のこの悲劇と同様に、中米そしてメキシコから米国に大人が同伴することなく未成年者だけの不法移民も増加しているという問題がある。  そこでは親と引き離されたのではなく、親が何かの事情があって不在となっているのだ。彼らは16~17歳や12~13歳と年齢はそれぞれ異なっているが、親か大人の同伴なく中米あるいはメキシコから米国との国境を違法通過しようと試みるのである。  国境警備隊によると、昨年10月から今年6月30日まで9カ月間にグアテマラからの米国に入国しようとした未成年者の内の1万7649人が国境で拘束されたという。それは前年同時期に比べ2822人の増加だとしている。  更に、彼らの統計によると、同期間中に国境で拘束された未成年者の総数は3万6390人になるという。即ち、拘束された未成年者のほぼ48%がグアテマラ出身者だということになる。中米で米国に向けて不法移民者の多い国はグアテマラ、エル・サルバドル、ホンジュラスの3か国である。  サン・カルロス・バロメオ修道会の伝道プログラム部長カロル・ヒロン氏は未成年者による不法移民の増加に警鐘を鳴らしているが、「子供たちに行かないようにと注意を促すが、何の為に残るのかという回答が出来ない状態である」と述べている。(参照:「Prensa Libre」)
次のページ
それでもアメリカに向かう理由
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会