また、ヨハンソンのキャスティングにトランス側から非難が起きたことについて、レリオ監督はこう語っている。
「もし私がトランス役はトランスの役者だけが演じるべきだと言ったら、それはダニエラ・ベガがシスジェンダーの役を演じるべきではないという意味も含むことになります」
たしかに、演じるキャラクターと役者の性的志向が一致しなければいけないのなら、ゲイの役者はゲイ役、レズビアンの役者はレズビアン役しか演じられないことになる。それは役者に、観客に、そして社会にとって、はたしていいことなのだろうか?
「社会でもっとも大事な財産のひとつである、芸術家の自由を制限するような考えに加わったり、支援することはありえません。芸術の自由が脅かされるというのは、社会が独裁主義的になっている徴候です。もしくはファシズムの臭いがしはじめる行動や流れに向かっています」
ハリウッドに限らず、現実社会でもセクシュアル・マイノリティと呼ばれるLGBTQの人々が、差別や偏見に晒されていることは間違いない。そういったテーマやアイデンティティをどのように表現していくべきなのか? まだまだ議論は収まりそうにない。
<取材・文・訳/林泰人>