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LGBTQがテーマの映画と言われて、どの作品を思い浮かべるだろうか? これまで『フィラデルフィア』のトム・ハンクス、『ダラス・バイヤーズ・クラブ』のジャレッド・レトなど、多くの役者たちがLGBTQを演じてアカデミー賞などに輝いてきた。しかし、そんな時代が終わるかもしれない。
今年に入ってから、ハリウッドではLGBTQに関連した議論が活発になっている。まずは『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフ作品『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』だ。
同作品では人気キャラクターであるアルバス・ダンブルドアの若き日が描かれる予定となっているのだが、実はこのダンブルドアがクィアであると原作者のJ・K・ローリングが明言したのだ。一般にクィアとは自身の性的志向が定まっていない人とされている。『ハリポタ』ファンの間では以前からダンブルドアがゲイなのではないか? という意見が多く出ており、それに対して原作者が具体的にセクシュアリティを明かしたという流れだ。
ところが、今年1月に『ファンタスティック・ビースト~』の監督デヴィッド・イェーツが、同作でダンブルドアのクィアとしてのセクシュアリティは触れられないと語ったのだ。これに対して、ファンからは「セクシュアリティを意図的に削除している!」と非難が噴出する事態に……。
さらには『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで知られる重鎮俳優、イアン・マッケランがこの問題について意見を発表。79歳のマッケランはゲイであることをカミングアウトしており、たびたびLGBTQが映画界で不当に扱われていると発言してきた人物だ。
『
タイムアウト』による取材で、ダンブルドアのセクシュアリティが明確にされないと伝えられたマッケランはこう答えている。
「そうなの? それは残念だね。まあ誰もハリウッドに社会的な意見は期待してないでしょう。最近ようやく世界には黒人がいるって気づいたぐらいだから。ハリウッドはその歴史のなかで、あらゆる点から女性を虐待してきたし。(ハリウッドの業界人にとって)ゲイの男性なんて存在していないんだよ。(マッケランが出演した)『ゴッド&モンスター』はゲイの人がいるとハリウッドが認め始めたキッカケだと思う。ハリウッドの半分はゲイだっていうのに」
ご存じのかたも多いだろうが、ヒーロー大作の『ブラックパンサー』や『ゲット・アウト』など、ここ数年ハリウッドでは黒人スタッフによって製作された映画が大ヒットしている。これまでは「黒人が作った映画は黒人にしかウケない」といった偏見が蔓延していたが、それが覆ったのはつい最近のことだ。
そういったハリウッドのマイノリティに対する扱いを皮肉りながら、LGBTQについての厳しい現状を訴えていたのである。
賛否両論出ている『ファンタスティック・ビースト〜』問題。渦中のキャラクターを演じたジュード・ロウは、監督の判断について『
エンターテイメント・ウィークリー』のインタビューでこう答えている。
「(原作者の)ジョー・ローリングは何年か前にダンブルドアがゲイ(実際はクィア)だと明かした。実は僕も彼女にそれを聞いて、ゲイだと言っていたよ。だけど、必ずしもセクシュアリティがその人間を定義するわけじゃない。彼にはいろんな面があるんだ。問題となっているのはダンブルドアのセクシュアリティがどのくらい映画のなかで明かされるかだと思う。この映画はまだシリーズの2作目だ。ジョーの書き方で素晴らしいのは、彼女がキャラクターを解き明かしていく過程なんだよ。時間をかけて心の内まで剥き出していくんだ。この映画では、まだ観客がアルバス(・ダンブルドア)を知りはじめる段階で、その先にはもっと多くのものが待っている。この映画の冒頭では彼の過去について少しだけ知らされるが、登場人物と彼らの関係は自然に明かされていくんだ。それを明かしていくことが楽しみだよ。すべてをいっぺんには明かさないんだ」
ロウは同作がセクシュアリティを“削除”したのではなく、あくまで話の展開上触れられていないだけだと主張している。続編が作られることになれば、登場人物のアイデンティティにもよりスポットが当たることになりそうだ。