NATO首脳会談でのトランプによるメルケル批判。その背後にある「欧州液化天然ガス市場」の覇権争い
El Economista」)
言いがかりにも等しいトランプのいちゃもんに対し、メルケルは「旧ソ連によってコントロールされていた(現在の)ドイツの一部で私は生活していた。今、我々はドイツ連邦のもとで自由のある中で統一されていることに私はとても感謝している。だから、我々は独立した独自の政治を行い、我々が独自の決定を下している。またそうであるべきです」と返答したという。(参照:「El Economista」)
今回のNATO会議でのトランプのドイツへの批判の根底にあるのは、トランプは米国のLNGをEU加盟国に売り込みたがっていることが背景にある。その為に、まずEUのリーダー国であるドイツが米国の敵であるロシアから多量に天然ガスを購入していることを批判し、EU内でもノルド・ストリーム2の建設に反対している国を米国の味方につけることを望んでいるのである。
現在、EUで消費される天然ガスの3分の1を賄っている北海で産出される天然ガスの産出量は徐々に減少している。
そこで米国のシェールガス企業が狙っているのは、先ずロシアからの依存度の高いドイツを批判することによって、天然ガスのロシアからの輸入を減少させ、米国のLNGの市場をEUに構築させることである。その代弁者がトランプなのである。トランプは政治家というよりも商売人だ。
米国は、ヨーロッパではガスの供給元を分散できるだけの大きな市場があると見ている。また、ノルド・ストリーム2の建設にEU加盟国がすべて賛成しているのではない。ドイツ、オーストリア、オランダなどは鮮明にこのプロジェクトに賛成を表明しているが、ウクライナのように自国を経由してEU圏へのガス供給量が減少することから、それは財政の歳入増加に繋がらないとして反対している。
また、当初サウス・ストリームの建設のルートに予定されていたブルガリア、セルビア、ハンガリー、イタリアなどはこの建設による恩恵はないと見て必ずしも賛成していない。特にイタリアの首相がレンツィーの時、彼はノルド・ストリーム2の建設はEU議会で事前の承認を受けるべきだという提案をしていた。
イタリアはサウス・ストリームが建設されていれば、イタリアの半国有石油・ガス企業ENIがその建設に参加する予定だった。それは間接的にイタリアの財政を潤すことに繋がっていたはずであった。 しかし、このプロジェクトは米国が干渉してブルガリアに圧力をかけて同国内でパイプラインの建設を承認させないようにした。そこでロシアはその建設を放棄したという経緯があった。
ノルド・ストリーム2の建設についても、トランプはこの建設に参加する企業に対し、米国は制裁を科すことも検討しているという。2015年からこの建設プロジェクトが開始されており、今になって制裁を科そうとするのはトランプ特有のやり方であろう。このプロジェクトに参加している主な企業はロシアGazprom以外にドイツUniper、オーストリアOMV、フランスEngie、ドイツWintershall、英国とオランダRoyal Dutch Sellとなっている。
7月11日にベルギーの首都ブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開かれた。この会議の席でトランプ米大統領はいつもの通りドイツを痛烈に批判した。今回の批判の対象にしたのは、ドイツがロシアからの天然ガスへの依存度が高く国の独立性が保たれていないという批判であった。
トランプはそれを次のように表明した。「ドイツはロシアから完全にコントロールされている。なぜならドイツが消費するエネルギーの60~70%は建設中のノルド・ストリーム2も加えてロシアから供給されることになるからだ。それによって年間に多額のお金がロシアに支払われることになる。その一方で、米国はロシアからの脅威の前にドイツそして他のヨーロッパの国々を守っている」と述べた。ノルド・ストリーム1は既に稼働している。
更にトランプは「この点について、我々はドイツと議論すべきだ。というのも、ドイツはGDPの1%を少し越えた額を軍事費及びNATOに充てているだけだ。それに対して米国は4.2%もの費用をそれに使っている」と指摘した。(参照:「トランプ、いちゃもんの背景
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