いっぽうでアウトドアのアクティビティという側面から考えても、自然を観察するという点において、アウトドアの基本といえます。
観察というと少し大袈裟ですが、風を感じ、雲の流れを眺め、梢の揺れ、波の変化、流れの強弱、小鳥の鳴き声、動物の気配、森の木々や草花の香り、雨の匂い、地面の凸凹、落ち葉を踏みしめる感覚、木肌や苔の肌触り……。自分の周囲の自然が発するものを受動的にも能動的にも感じ取ることです。
山を登ったり、自転車やカヌーを漕いで移動するなかで、釣りをしたり、テントやタープを張ってキャンプをしながら、そうした自然に対する鋭敏な感覚を持つことが、アウトドアの基本としてあります。筆者である私も、近所の土手にアウトドア用のイスを持っていきチェアリングをしてみましたが、他のアウトドアと同じように、五感を総動員できる面白さがありました。
山奥まで行かなくても、ちょっとした自然のなかで開放的な気分が味わえる <撮影/PONCHO>
そう感じたところで、ふと浮かんだのは、これってイスを使った「座禅」なんじゃないかということです。登山やランニングでしばしばランナーズハイのようなフロー状態になることがあって、それは「動的瞑想」と呼ばれています。いっぽう、座禅やヨガで仰向けになって脱力するポーズのシャバアーサナなどは、「静的瞑想」と呼ばれます。
どちらも自分の外側の世界、つまり自然を感じ取ることから、次第に自分の内側、意識へと集中して内観していくことで瞑想状態になり、結果ストレスがほぐされて、イヤなことを忘れ、さらには免疫力が高まると言われています。ひとりで土手や公園で座禅を組んでいたら、変わった人と思われがちですが、イスに座って心静かに風景を見る延長線上で自分を観察して瞑想していれば、特段変な人には見られません。それが例えば、夕方のサンセットタイムに沈む夕日を眺めていれば、気持ちにも時間にも余裕がある人なんだなぁという位にしか思われないでしょう。しかも、サンセットを見ることは、心が穏やかになり瞑想状態に入っていきやすいのです。
近年、夏フェスで放置されたイスや折り畳まずに運ぶ観客が問題となっているように、チェアリングを実践する際には設置場所やイスの管理には注意が必要です。しかし、そんな最低限のマナーさえ守れば、チェアリングは大掛かりな道具を使わずに自然を体感することができます。
仲間と一緒に都市を遊ぶ手軽で新たなアクティビティとしても、ひとりでこっそり行うストレス解消の健康法としても、チェアリングはたぶん、きっと、いや間違いなく、注目されること必至です!
<取材・文・撮影/PONCHO 写真協力/日本チェアリング協会>