大掛かりな道具も遠出も不要なアウトドア・アクティビティ「チェアリング」が密かなブームに

PONCHO

IMG_1510

街中でもゆっくり腰掛けられるベンチなどが減っている今、自らイスを用意して自然に溶け込むチェアリングは新たな癒しとなるかもしれない<写真提供/日本チェアリング協会>


 キャンプや夏フェスなど、アウトドアのアクティビティが増えていくこの時期。自然のなかで腰掛けるだけでも普段は味わえない開放感があるが、「チェアリング」という言葉をご存じだろうか? すでに大ブームとなっているヨガとの共通点など、近年注目されている「チェアリング」の極意をアウトドアライターのPONCHO氏が解説する。

日本人らしいアウトドアスタイル

「チェアリング」という言葉をはじめて目にしたのは、今年の春です。無印良品キャンプ場のサイトにある『みんなの外あそび』というコラムで、「持ち運べるイスがあればOK! 手軽な外あそび」として紹介されていました。

 そのコラムによると、チェアリングとは「公園や川沿いなどのお気に入りの場所へ持ち運び可能なイスを持っていき、座ってのんびりする」こと。

 最初の感想を正直に打ち明ければ、「こんな当たり前のことがアクティビティとしてわざわざ紹介されるものなのか……?」という気持ちでした。

 しかし、よくよく考えてみれば、散歩の記事は気持ちよい場所や、街なかのおいしいお店を歩いて巡るだけです。サイクリング記事も同様で、自転車を漕いで気持ちよいコースや快適な自転車の紹介です。ならば、ただのんびり座るのに適した場所、イスの紹介、楽しさの解説があっても不思議ではないのだと思い直しました。

 そこで、「チェアリング」と検索すると、日本チェアリング協会というものが存在していました。同協会は「椅子ひとつで世界はあなたのリビングルーム」を標榜。日夜、普及・促進に努め、「チェアリング・ミーティング」なるものも開催しているといいます。そこでこの記事を書くにあたって、連絡を取ってみました。

 チェアリングを提唱したキッカケを問うと、同協会の伊藤雄一さんからは次のような回答が返ってきました。

「’17年の夏に好きな女性から、デートに『リュクス(贅沢・優雅)な癒し』というテーマをいただき、それ東京でやるとすげえ金がかかるやつだと悩みました。そんなとき、友人のスズキナオさんとパリッコさん(ライター。2人で『酒の穴』というユニットを組んでいる)が雑誌『酒場人』でチェアリングをやっていたのを思い出し、提案すると快諾。実際にやってみて、これちょっと社会を変えてしまうんじゃないかと確信しました」

 彼らが行っているチェアリングは、日常のすぐ傍らにある公園や川や海の岸辺、そして最近では街なかでイスに座り、近所のコンビニやスーパーで手に入れた酒やツマミを頂きながら、移ろいゆく風景、人の流れを見つめて、寛ぐというもの。まさに「世界をリビングルーム」にしているのです。

 なるほど、たしかに日本人は古くから農作業の合間の休憩に、田畑の傍らの木陰にゴザを敷き、お弁当を食べ、お茶を飲んで寛いできています。それは今でも田舎に行けば当たり前の風景ですし、花見はその進化系といえるものです。また日本家屋にある縁側は、日向ぼっこをしながらご近所さんや知り合いと庭や空や自然を感じながら談笑するスペースとしてあります。心地のよい場所を、自分たちのリビングルームとすることは、日本の伝統ともいえるものです。

 つまり、チェアリングとは、新しいアクティビティというよりも、日本人らしい野外空間の楽しみ方の延長線上に生まれたものだと思えます。携帯できるアウトドア用のイスを使うことで、より自由さと、寛ぎやすさを獲得したといえるでしょう。

次のページ 
近所の土手でもアウトドア
1
2
4
5
関連記事
6
7