西友は首都圏の駅チカ店舗が多く、そうしたエリアにある自社所有物件は地価の上昇にともない価値が上がりつつある。先述の通り、駅チカ店舗の多くは建物が老朽化しており更新時期に差し掛かっているものが多く、これらを手放してディベロッパーなどに売却することで収益を得る、というかたちだ。
仮にそうなった場合、小売店として営業を続ける店舗は、地域ごとにまとめて数店舗ずつ、その地域の大手流通企業が経営を引き継ぐことになる可能性が高い。小売店としての「西友」の屋号は早晩に消えることになるであろうが、西友はそれら旧店舗の不動産を管理する企業として残ることになるかも知れない。
西友は首都圏の駅チカに多くの自社所有物件を持つ(浦安店、西友子会社が所有)。浦安店は壁一面に「SEIYU」のロゴがあしらわれていることが特徴だ
さて、ここでもう1つ注視しておきたいのは、大手IT企業「楽天」の動きだ。
実は、西友と楽天は今年「戦略的提携」を発表したばかり。3月に新たな合弁会社「楽天西友ネットスーパー」が設立されたほか、4月からは楽天市場内で先行してプライベートブランド「みなさまのお墨付き」の販売が開始されている。今夏中には西友のネットスーパーが「楽天西友ネットスーパー」としてリニューアルオープンする予定で、今後は楽天ポイントの店頭利用、物流機能の共用による効率化・ネット通販の利便性向上など、提携の更なる深化も期待されていた。今回の売却に関して楽天がノータッチでいられるはずがなく、ひいては同社も西友の将来に関しての大きなカギを握る企業の1つになるかも知れない、というのは考えすぎだろうか。
様々な可能性が想像される今回の西友売却劇。いずれにせよ、今後更なるリストラが行われることは確実であり、我々消費者は「新たな経営者の手腕」に期待するのみである。
欲を言えば、永年親しまれた「西友」、そして「サニー」の屋号はこれからも残って欲しいのだが……。
<取材・撮影・文/若杉優貴(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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