かつての西友の大型店は、百貨店業態やショッピングセンター業態の店舗も少なくなく、また、小さな店舗でもあっても個性的な売場や陳列手法が採られていた店舗もあり、館内には文化ホールやからくり時計が設置されるなど、セゾングループらしい「地域貢献」も見られた。また、傘下に収めたサニーも元々は百貨店「岩田屋」の傘下であり、提案型の食品売場が人気を集めていた。
しかし、スーパーセンター型のディスカントストアを得意とするウォルマートの傘下となって以降はディスカウント志向の内装へと改装された店舗も多く、海外スーパーで見られるような大量陳列型の什器が導入されるとともに店内装飾が撤去され、節電のために照明が半分ほどに減らされた店舗さえもあった。
西友は築年数が高い店舗が少なくなく、そうしたディスカウント志向の売場となると「古さ」が余計に目立ってしまう。さらに、プライベートブランド「グレートバリュー」に代表されるような外国産の大容量・大量消費型商品は日本、とくに西友が多く出店する都市部の生活形態には合わず、消費者離れを引き起こした。
近年は日本独自のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」が導入されたほか、再改装により小綺麗になった店舗も少なくないが、もはや「時すでに遅し」であろう。
からくり時計が設置されていたリヴィン姫路。ウォルマート傘下となって以降、ここ数年は故障していた。同店にはこのほか、バンケットルームや文化教室もあった
西友の不振の大きな要因の1つとなっているのが、こうした「老朽店舗の多さ」だ。とくに西武沿線の店舗は1960~70年代に建てられた物件が多く、老朽化にともない耐震性不足が指摘されている店舗もあるため、建物の耐震改修・建替えが喫緊の課題となっていた。
ウォルマートは、先進国ではアマゾンなどのネット通販・ネットスーパーに押されて業績が低迷しており、今後はお膝元の米国ではデジタル分野への投資を、米国外ではアフリカなど新興国への投資を重点的に行うとしている。
そうしたなかで、ウォルマート流が受け入れられない上に老朽店舗が多く、そしてネット通販との競合も厳しく、何より少子高齢化により成長の余地が少ない日本エリアにはこれ以上の追加投資は難しい、という判断が下ったというのが「売却する方針」という説が浮上した根拠だろう。
西武沿線には築50年前後の店舗も少なくない(久米川店、東村山市)。2015年に改装されて直営売場を縮小、多くのテナントが導入された
もちろん、西友は近年不採算店舗・老朽店舗を大量に閉店させたほか、多くの店舗で衣料品売場の縮小・テナント化を進めているため、「GMS苦境」に陥っているイトーヨーカドーなどと比較すると業績はそれほど悪くないであろうという見方もあり、その点では売却を否定したウォルマート側の公式見解とも一致している。
ただ、西友は現在非上場であり、詳細な業績を発表していないが、こうした経営改善策により、業績の改善に目処が立ったとして売却を図った可能性もあるし、ウォルマートとしても人口減少社会で魅力が失われつつある日本市場に留まる可能性は低いので、出資比率を落とすなり、店舗単位、地域単位での譲渡、売却の可能性もありえる。いずれにしろ、現段階ではまだ確たることは言えない状況で、西友の将来もはっきりとは見えてこない。