しかし、今回のようにOTBグループは企業として知名度があり、しかも同社を弁護したのは3つの弁護士事務所が合併して2013年に誕生したDentos事務所という弁護士事務所だった。この事務所は、中国で140の都市に進出、7300人の弁護士を抱える同国最大の弁護士事務所Dachengとも合併したという経緯のある、かなり規模の大きい強力な弁護士事務所だったのである。
OTBグループとしては。訴えた相手が相手だけに今回の訴訟を絶対に勝訴するのだという強い意気込みであったようで、その為に弁護士の選択にも万全を期したようであった。(参照:「
Voz Pupuli」)
今回の勝訴で注目されるのは、問題のジーンズの場合は、そのデザインはイタリアで意匠登録されたのではなく、欧州連合(EU)で登録したものだという。またサンダルについては意匠登録がEUでもされていなかった。しかも、被告はイタリアではなく、スペインに登記されている企業である。このような変則的な事情であったにもかかわらず、ミラノの裁判所はEU内で起きた訴訟だとしてジーンズもサンダルも多大の損害を被ったというOTBの言い分を認めたのである。(参照:「
Modaes」)
当然ながら、ZARAはこの判決を不服として控訴するか否か検討中だという。
ZARAは、世界的に知名度が高い故にデザインの模写についてことさら注目を集めているが、ZARA以上に模写を頻繁に行っているのが激安チェーンのアイルランド生まれのPRIMARKである。著名ブランドの商品を模写してZARAよりもさらに安価な価格で販売するのを常としている。但し、PRIMARKはネット販売をしておらず、店頭での販売だけに限定していることから模写された側がそれに気づくまでに少し時間を要するという事情がある。
世界的なアパレル企業となったインディテックスだが、今回の訴訟によって、今後のブランドの方向性をどうしていくのか、行方が注目される。
<文/白石和幸 photo by
Daniel Lobo via flickr(CC BY 2.0))>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。