「この人、何か変だ」……そんな直感には理由があった
2018.07.12
清水建二
自分の感情の変化に責任を持つということ
このように無意識の力に身を任せたままの状態で、私たちは日々知らず知らずのうちに自他の微細な表情変化に様々な影響を受けていると考えられます。
もし、他者の感情に影響を受けているという自覚を持ち、それを意識化することが出来れば、自分の感情の変化やそれに伴う行動の変化に責任が持てるようになると思われます。
例えば、あるビジネスプロジェクトのリーダーが、朝から何だかイライラしています。
イライラの原因はわかりません。しかしイライラしていること自体そのものを自覚しているリーダーは、自分のイライラでチーム内の雰囲気を悪くしたくないため、このネガティブ感情を他のメンバーに悟られないように平静を保とうとします。
しかし、そのイライラが微表情から漏れ出し、結局、他のメンバーに伝わってしまいます。リーダーのイライラを感じとった他のメンバーは、リーダーのイライラの原因を自分たちのせいにしてしまうかも知れません。当然、職場の雰囲気はギクシャクしてしまいます。
微表情が無意識のうちに伝わってしまう事実をリーダーが知っていれば、自分のイライラを他のメンバーに変に隠すようなことをせずに、自分の感情状態を皆と共有し、イライラの原因はメンバーのせいではないことを予め伝えておくことが出来るでしょう。
また自分のイライラを引き起こした原因が、早朝ミーティングの席で自分に向けられたある人物の軽蔑の微表情であったことを意識的に認識出来ていれば、自分のイライラの原因が明確になり、軽蔑に対処する方策を通じてイライラを適切に治めることが出来るかも知れません。
「自他の微表情を意識的に認識し、感情を客観視することを通じて自分の感情の変化に責任を持つ」
人と接することが多い職種や人に大きな影響を与える職務を担っている方々ほど、こうした自覚と営為が大切だと、本研究は私たちに語りかけてくれているように思います。
参考文献
Svetieva, Elena and Frank, Mark Gregory, Seeing the Unseen: Evidence for Indirect Recognition of Brief, Concealed Emotion (December 7, 2016). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2882197 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2882197
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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