いくら感情を抑制しても、微表情に漏れ出ることを隠し切ることはできない
こんにちは。微表情研究者の清水建二です。本日は、自分と他者の微表情が知らず知らずのうちに各々に与えている影響について考えたいと思います。
人と話しているときに、通常のコミュニケーションと比べて「何か変だ。」「違和感がある。」といったことを誰しもが体験したことがあるかも知れません。違和感の根拠がそのときはハッキリとわからなかったとしても、後になってその相手が自分に良い印象を抱いていなかったり、深刻な悩みを抱えていたことがわかったり、そんな経験があると思います。
こうした経験の根底には、私たちに備わっているいわば「無意識の微表情検知システム」と呼べる力が関わっている可能性があります。
微表情――抑制された感情が瞬間的あるいは僅かな表情筋の動きを伴って顔に現れる現象―は、特殊なトレーニングを積まない限り、明確に認識することは難しく、目の前の人の顔に微表情が生じていても80%~90%は見過ごされてしまいます。
しかしSvetieva及びFrank(2016)の研究によれば、私たちの身体は無意識的に微表情を認識しているようなのです。
実験の流れは次の通りです。ある人物の顔に微表情が生じている様子を捉えた動画が用意されます。その動画を実験参加者に観てもらいます。このとき実験参加者の生理反応を計測しておきます。動画視聴後、動画の人物がどんな表情をしていたかを実験参加者に質問します。
実験の結果、実験参加者は微表情を正しく特定することが出来ませんでした。
つまり、意識的には微表情を認識することが出来なかったということです。しかし、実験参加者の生理反応はネガティブな微表情をみていたときに高まっていたことがわかりました。計測された生理反応は意識的にコントロールすることが難しいことが知られています。つまり、実験参加者の身体は微表情に無意識に反応していたことになります。
この実験の次のフェーズでは、微表情動画視聴後、その動画の人物にどんな印象を抱いたかを実験参加者に質問します。実験の結果、恐怖と悲しみの微表情視聴時に生理反応を示した実験参加者は、その微表情の人物に親しみを感じる傾向にあることがわかりました。
この一連の研究からわかることは、私たちは意識的に微表情を認識することは出来なくても無意識に認識することが出来、さらに無意識に認識された微表情が気持ちの変化を引き起こす、ということです。微表情を生じさせている当人の側から捉えれば、感情は抑制しても通じてしまう、ということになります。