区切りはついたが、「オウムをめぐる問題」は解消していない
この日の現場の様子を、実体のないカラ騒ぎと捉えるべきなのか、感じるべき危険を感じることができない平和ボケと嘆くべきなのか。何か平衡感覚を失ったような気分に陥ってしまった。
オウムの現存団体の問題はテロだけではない。正体を隠しヨガサークルなどを装う
偽装勧誘。財産や労働力など信者からの
収奪。
信者と家族の断絶。
社会の側からの信者に対する差別や排斥もまた、オウムの現存団体を維持させてしまっている要因であり「オウム問題」の一部だ。森達也氏らのように、麻原の指示によって起こされた事件であるという真相すら未だ不明であるかのように語ったり、麻原の裁判が不当に終結させられたかのように語ったりする
「歴史修正」も、今後に影響する重大な問題だろう。
テロを警戒することに異論はないが、
テロ以外にも考えなければいけない問題が山積みだ。麻原の死によって、事件には確かに大きな区切りがついたことになるが、オウムをめぐる問題が解消したわけではない。
テロ以外の残された課題について考える記事は近日公開予定。
<取材・文・撮影/藤倉善郎(
やや日刊カルト新聞総裁)・Twitter ID:
@daily_cult ※ロック中>
ふじくらよしろう●1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『
「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)