ポピュリズム右派政権樹立のイタリアを皮切りに忍び寄るEU崩壊の危機
2018.07.04
6月には米朝首脳会談が実現し、アメリカではFRBが利上げを実施。欧州でも量的緩和の縮小が進んでいる。時々刻々と変化する世界情勢のなかで、投資家はどう対応すべきか? 闇株新聞氏が4つのキーワードから注意点を抽出した。今回はそのうちの一つ、「EU崩壊」の話題から解説していただこう。
欧州政局もマーケットの不安材料としてくすぶっています。’16年6月の英国民投票ではEU(欧州連合)離脱の賛成票が過半数を超えて残留を呼び掛けていたキャメロン首相が退陣し、’17年5月のフランス大統領選では反EUを掲げる仏極右政党・国民戦線のルペン党首が決選投票にまで勝ち進んだことをご記憶の人も多いでしょうが、’18年はイタリア政局を注視すべきです。
3月に行われた総選挙では、バラマキ政策を推進するポピュリズム政党「五つ星運動」と、移民排斥とEU離脱を掲げる極右政党「同盟」の左右両極が連立政権樹立を目指し、両党でほぼ半数の票を獲得することに成功しましたが、組閣が難航。5月に入って首相を選ぶ権限のあるマッタレッラ大統領に組閣を命じられた法学者のジュゼッペ・コンテ氏が「五つ星運動」推薦のEU懐疑派パオロ・サボナ氏の財務相就任を拒否したところ、再選挙を求める機運が高まり、イタリアの10年債利回りが一時3.4%と4年ぶりの高水準に急騰する場面が見られました。
5月末にサボナ氏の財務相だけを入れ替えた組閣案が承認され、ひとまず再選挙のリスクは回避されましたが、大きな禍根を残したのは間違いありません。なぜなら、イタリアはEUの“オリジナルメンバー”。EUの原型はドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、イタリアという旧フランク王国(5~9世紀)の6か国が’51年に調印したECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)です。イタリアでEU離脱を求める世論が高まったことは、もともと“外様”の英国がEU離脱となったことよりもショッキングな出来事なのです。
オリジナルメンバーの反EU転換でユーロ売り圧力くすぶる
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