堀江貴文氏出資のインターステラテクノロジズのロケット打ち上げ失敗が、“ある意味当然”である理由

打ち上げ直後に墜落、炎上

 MOMO 2号機は6月30日5時30分、北海道大樹町にある発射場から打ち上げられた。しかし、発射台を離れた直後に墜落。炎上を起こした。  あらかじめ発射場周辺は立入禁止になっていたため、けが人などはなく、発射場の設備への被害も軽微だという。  その後の記者会見では、ロケットから送られてきたデータなどから、打ち上げ直後からロケットエンジンに異常が起き、その後、エンジンのパワーが失われたことが判明。さらにその直後に、エンジンの真上あたりで火災が起きていたこともわかったということが発表された。  こうしたことから、エンジンになんらかのトラブルが起きたと推定できるとしている。ただ、別の原因に引っ張られてエンジンがトラブルを起こした可能性もあるため、主原因は断定されていない。  今後、ロケットの残骸を調べるとともに、外部の有識者による協力も得つつ、原因究明を進めるとしている。またMOMOの3号機を開発、打ち上げるのかなど、今後の計画についてもまだ未定だという。

打ち上げ直後のMOMO 2号機。ロケットから送られてきたデータからは、この時点ですでにエンジンに異常が見られたほか、映像からは炎が横方向に噴き出している様子がわかる 提供: インターステラテクノロジズ

ロケット開発で失敗は「当たり前」

 今回の失敗は、ずいぶんショッキングな光景として映像に残り、テレビなどで大きく報じられたこともあって、失敗を嘲笑、あるいは責めるような意見も見られた。  しかし、ロケットも他のものづくりと同じく、トライ・アンド・エラーの繰り返しでしか技術と信頼性は成熟しない。また、ロケットはその特性上、ちょっとした実験や試験をすることが難しく、また一度打ち上げると、そのまま宇宙まで飛んで成功するか、さもなくば機体が失われるほどの失敗に終わるかという二者択一しかない。  さらに失敗した場合も、海に没したり、大気中や地上でばらばらになったりして、機体を回収しての原因究明ができないという厳しい結果になりがちである。今回のMOMO 2号機は、失敗までのデータも取れ、機体の残骸もあるため、その点ではまさに不幸中の幸いだった。  古今東西、宇宙ベンチャーはもちろん、NASAのような国の機関も、大企業も、今回のような失敗を数多く経験してきた。いまをときめくイーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXも、最初にロケットが打ち上げ成功するまでは3回連続で失敗した。そうした失敗の連続があって、いまの高い信頼性がある。  今回のMOMO 2号機の失敗もまた、新しいロケットを開発する上で必ず通らなければならないハードル、産みの苦しみとでもいうべきものであろう。

イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXも、最初にロケットが打ち上げ成功するまでは3回連続で失敗した (C) SpaceX

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宇宙ベンチャーを支える環境整備が必要
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