デビッド・リンチの「もっとも偉大な大統領」発言にトランプもご満悦。映画監督の真意とは
トランプ大統領“ベタ褒め”の見出しが踊る
トランプ大統領がツイッター上で引用した、“ベタ褒め”発言の主は映画監督のデヴィッド・リンチ。カンヌ映画祭でパルムドールに輝いた『ワイルド・アット・ハート』や『ブルーベルベット』、『マルホランド・ドライブ』といった作品を手がけ、コアなファン層がいることで知られる鬼才だ。リンチの名前は聞いたことがなくても、日本でも一大旋風を巻き起こしたドラマ『ツイン・ピークス』は観たことがあるという方も少なくないだろう。 そんなリンチ監督が「(トランプ大統領は)史上もっとも偉大な大統領になるかもしれない」と発言したという記事が、オルト・ライト系で知られた6月24日『ブライトバート』に掲載された。しかし、トランプ大統領は見出しを読んで反射的にリンクを投稿してしまったのかもしれない。というのも、その発言には続きがあるからだ。 この『ブライトバート』の記事、実はそもそも『ガーディアン』に掲載されたインタビューから、特に政治的な内容を都合よく抜粋した記事なのだ。同記事ではリンチ監督は次のように語ったと報じられている。 「私はあまり政治的な人間ではない。だけど、好きなことができる自由を尊んでいる。(トランプは)歴史上もっとも偉大な大統領になるかもしれない。なぜなら、(国家や制度など)いろいろなものを崩壊させたからだ。誰も知的な方法ではこいつに対抗できないだろう」 「我々のいわゆる指導者たちは国家を前進させられないし、何も実現できない。まるで子どもみたいだ。トランプはそういったことをすべてを示したんだ」 デビッド・リンチという人物をよく知るファンならば、皮肉にも聞こえるものの、素直にトランプ大統領の豪腕っぷりを評価しているとも読み取れる発言であり、『ブライトバート』もそのような方向で取り上げている。また、同記事では、リンチ監督が’16年の民主党予備選ではバーニー・サンダース氏を、その後大統領選ではリバタリアンのゲイリー・ジョンソンを支持したことも記されているが、その点もリンチがあたかも宗旨変えをしたかのように読める書き方をしている。 また、’06年の『リーズン』誌からの発言も引用されている。 「ずっと自分のことをリバタリアンだと思ってる。無政府主義の次に信じてきたよ。今でもどちらかというと政府なんていらないし、そんなにルールがないほうがいいと思ってる。信号機とかそういうものは別としてね。交通ルールは信じてるよ」 「今は民主党を支持している。ずっと民主党支持者だね。だけど、民主党もそんなに好きじゃないんだ。喫煙者だからね。民主党議員の多くは禁煙のルールを打ち出してるだろう。別に悪いことじゃないけど、喫煙者にも居場所も与えてほしいよ」 はじめにリンチ監督自身が「政治的な人間じゃない」と語っているとおり、タバコとコーヒーをこよなく愛するリンチ監督の“禁煙論”も含め、既存の政治家への失望感を書きつつ、大きく打たれた見出しで巧妙に「リンチはトランプ支持に転向したのか?」と思えるようにミスリードしていく、オルト・ライト系ニュースサイトの巧みな世論誘導のテクニックがよくわかる構造になっている。“Director David Lynch: Trump Could Go Down as One of the Greatest Presidents” https://t.co/AcgnIZNh6e
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) June 25, 2018
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