退職した日経新聞記者が自信満々で株式投資に挑んだら500万円の大損をした理由

1000万円投資するも半分を失い、株の世界からしばらく身を引く

燃えるお金 それでも価格はさらに下がり続けましたが、下がればまた買うという攻めの姿勢を続けました。当時は退職金も入ったことだし、私が書いた本も売れて気持ちが大きくなっていたのでしょう。IT関連企業や、今でいうメガバンク、電気機器メーカーなどの株式を総額で1000万円近く買い続けました。  さすがに、止めどもなく落下を続ける株価に不安を感じ、正気に戻った時はすでに遅く、結局、手元には投資額の半分500万円程度しか残りませんでした。「普通の人とは違う」とうぬぼれ、意気込んで始めた株取引でしたが、2年ほどで大敗北を経験し、「株は自分には向いていない」という苦い思い出だけが残りました。  それ以降、しばらく株の世界から身を引くことにしました。  私は新聞社を退職した後、私立大学の教授に転身しました。各教師にはパソコンが1台与えられます。それを使って年間のシラバス(授業計画)づくり、毎回の授業で使う資料のパワーポイント作成、ゼミの授業で使う写真や動画類もインターネットで検索し、利用します。  研究費の内訳など大学事務局への報告、教授会の日時や審議事項、報告事項などの連絡はすべてメールで処理されます。パソコンに精通していなかった私も、2年ほど経つと何とか自分でパソコンを自由に使いこなせるようになりました。

株価上昇とともに湧き上がってきた株への関心

 一方、ITバブル崩壊後も日本の株価はさらに下落を続けました。「(古い)自民党をぶっ潰す」と吠え、「聖域なき構造改革」を掲げて小泉純一郎首相が登場したのは2001年4月26日です。その日の日経平均株価は1万3973円でした。同年9月11日にアメリカ・ニューヨークのマンハッタンで同時多発テロが起き、同日の株価は1万293円まで下落しました。その後も株価は低迷を続け、2003年4月28日にはバブル崩壊後の最安値(さいやすね)となる7608円まで低下しました。  当然のことですが、株価が低迷している時は世間の株への関心も急速に低下します。私も例外ではなく、ゼミ生の卒論指導や環境改善運動に取り組むISO学生会議の学生たちと学内の省エネ活動や毎年12月に東京ビッグサイトで開かれる「エプロダクツ」への出展指導などに没頭し、株は“遠い世界の話”として私の意識の中から消えていったのでした。  ところが、日経平均は2003年4月にボトムを付けた後、急速に回復に向かい始めました。小泉首相が着手した金融機関の不良債権処理、郵政民営化などの一連の構造改革の効果が表れ、ITバブルの崩壊で低迷していた景気が上向き始めました。いわゆる“小泉景気”の到来です。株価も急上昇を始めました。  2004年には1万1000円を回復、2005年に1万5000円を突破、2008年9月のリーマンシ・ョック直前には1万8000円を突破する勢いでした。不思議なもので、株価がここまで回復してくると、頭の片隅にも残っていなかったはずの株への関心が再び湧き上がってきたのです。

株取引のルールを大幅に変えた“ネット株革命”

 インターネットを利用して、自宅のパソコンやタブレット、スマホなどで株取引することを「オンライントレード」「インターネットトレード」、略して「ネットトレード」などと言います。実際に取引をする人を「オンライントレーダー」「インターネットトレーダー」最近では「ネットトレーダー」などと言っています。オンライントレードの歴史は比較的新しく、アメリカでは1995年頃、日本では2000年頃からです。  ネット株取引はICT革命の進展によって始めて可能になった取引ですが、それまでの証券会社の店頭で行われていた株取引ルールを根本的に変えてしまう大きな力を持っていました。アマゾンなどに代表されるネット通販会社がこの10年程の間に売り上げを急激に伸ばし、百貨店や専門小売店を凌駕するようになった理由と似ています。個人投資家の大分部はいまやネット取引に移行しており、“ネット株革命”と呼んでもよい大きな変化を株取引の世界に与えています。
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ITブームで失敗した記者を救ったのもITだった
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