中東・ヨルダンの市民による増税反対デモの背後に米国、イスラエル、サウジの影

白石和幸

Public Domain

 中東のヨルダンで、国民が政府の増税政策に反対して6月当初デモを行ったことが日本の報道でも取り上げられた。それが話題になった理由は、アラブの春を再現する王政崩壊に繋がるのではないかという懸念からであった。
 ヨルダンは小国であるが故に日本ではあまり重要視されていない。しかし、ヨルダンが崩壊すれば、地政学的に中東の政情均衡が一気に崩れる可能性があるとして欧米諸国の間では重要視されている地域なのだ。

イスラエルの米大使館移転で外交転換を余儀なくされたヨルダン

 ヨルダンは6か国(パレスチナ、レバノン、シリア、サウジアラビア、イラク、イスラエル)と国境を接する王国で、自然資源も存在しない小さな国である。そのため、米国やサウジアラビアなどからの資金援助で国が維持されているようなものである。例えば、米国からは年間12億ドル(1300億円)の経済そして軍事支援を受けている。経済面ではサウジアラビアからの支援が重要となっている。また、イスラエルにとってはヨルダンは防衛上重要な国で、防衛手段の提供とそしてヨルダンの国境警備にイスラエルが協力している。

 ところが、米国にトランプ大統領が登場し、イスラエルの首都をエルサレムと認めて、そこに米国大使館を設けるという決定をしたことによってヨルダンのアブドラ2世国王が外交転換を余儀なくさせられた。

 理由は、ヨルダンの人口950万人の内の50%以上がパレスチナ人で、東エルサレムを首都と定めたパレスチナ国家を建設しようとしているパレスチナ人にとって、イスラエルが米国の支援でエルサレム全体を首都にしようとする考えに賛成できないからである。

 しかも、アブドラ国王はイスラム教創始者マホメットの一族の家系を継ぐ名家ハーシム家で、同家はエルサレムのイスラム教の聖地を守護する役目を担っている。このような歴史的な背景もあって、アブドラ国王はトランプ大統領とイスラエルがエルサレムをイスラエルの首都にしようとする動きに反対を表明せざるを得なかったのである。

 それが具体的に表現されたのは、昨年12月のトルコで開かれたイスラム協力機構(OIC)の席だった。OICに出席したアブドラ国王は、トルコのエルドアン大統領が主張する「東エルサレムはパレスチナの首都である」という考えに同調したのである。この考えの延長線上にはサウジアラビアのライバル、イランの存在もあった。

 ただ、これを問題視したのは米国である。米国、イスラエル、湾岸諸国にとって、アブドラ国王のトルコに味方するこの動きは都合が良くない。そこで彼らがアブドラ国王の外交方針を従来の米国やイスラエル寄りに戻すのに利用したのが、この記事の冒頭のヨルダンの市民の増税反対への抗議デモだった……というわけだ。

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ヨルダンのデモの背景
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