そうは言っても、「話さなければならない内容がこれだけあるのだから、間をつくっている余裕はない」と思う人もいるでしょう。そう思ってしまったら、プレゼンテーションの構成そのものを見直すことをお勧めします。
プレゼンテーションスキル演習をしていると、話したいポイントが10あるので、10話さなければならないと思い込んでいる人が多いのです。データの提供や分析結果の共有であれば、資料の配布で代替できることもあるでしょう。
聞き手を引き付けるためのプレゼンテーションなのであれば、プレゼンテーションの持ち時間で行うことは、相手を引き付けるために効果のあることに専念して、限界効用逓減を加速してしまうことは極力はぶくということがお勧めです。
プレゼンテーションで話さなければならないと思うことが10あるとすれば、そのうち、最も伝えたいことから3つを話すことの方が、10全部話すことよりも、相手の集中度や関心度を維持できて、訴求度合が高まるのです。
残り7つを話さないことはどうしても許容できないと感じたならば、話さなければならないと思うこと10を、3つのカテゴリに分けて、言いたいことを3つにまとめて話すということも有効な方法です。
「なぜ3つなのか」「10ではだめなのか」「せめて4つや5つではだめなのか」という質問をいただいたこともありますが、私の20年来の演習や企業でのビジネススキルのサポート実習経験をふまえて、上位3つや区分した3つを伝えることが、聞き手を最も引き付けやすいからなのです。これは、試してみて実感することが一番です。
「話さなければならないと思うことが10ある」というのは話し手の論理です。話し手がそう思っても、それを実施していたら、聞き手を引き付けることができないので3つに絞る。
これは、聞き手を引き付けるというプレゼンテーションの目的に忠実に従ってプレゼンテーション実施するという手法です。あれこれ考えているうちに、いつの間にかプレゼンテーションの本来の目的を見失っているケースが少なくないのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第87回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある