サッカーだけじゃない。映画『ハン・ソロ』は監督交代で予算規模も巨大に

“大ばくち”がメガヒットを生む例も

 膨大な予算がかかり、世界を見据えたマーケティング戦略が必要とされるブロックバスター映画では、監督交代劇は珍しいものではない。近年、映画界を席巻しているアメコミ映画でも、古くは『スーパーマンⅡ 冒険編』(’81年)をはじめとして、多くの作品で監督が代わっている。  日本でも大ヒットした『アントマン』は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』などで知られるエドガー・ライトを監督として始動した。ライトは’00年からプロットを書き始め、’06年には正式に監督に決定。数々のリライトを重ねながら、’13年にはようやくプリプロダクションがスタートしたが……。‘14年に“意見の相違”で降板。ペイトン・リード監督とバトンタッチすることになった。  しかし、同作は2大レビューサイトでのスコア(82%・64点)もよく、世界興収も5億ドル以上と十分ヒットした。  それ以上に成功した監督交代と言えば、『ワンダーウーマン』だろう。もともとはドラマ畑出身のミシェル・マクラーレンが監督するはずだったが、アカデミー賞にも輝いた映画『モンスター』のパティ・ジェンキンスにスイッチ。ジェンキンスはデビュー作『モンスター』が高い評価を得たものの、それ以降、長編映画を撮ることはなく、10年以上のブランクがあった。ド派手なアクションが魅力のブロックバスター映画を撮れるのかと、その交代を不安視する声も多く、まさに“大ばくち”と言える交代劇だったのだ。  ところが、蓋を開けてみれば『ワンダーウーマン』は全米だけで4億ドル以上を稼ぎだすメガヒットに。『ロッテン・トマト』で92%、『メタクリティック』で76点と、批評面でも大絶賛された。  また、『ジャスティス・リーグ』(40%・45点)ではザック・スナイダー監督の娘が急逝したことで、『アベンジャーズ』で知られるジョス・ウェドンが追加撮影を引き受けた。監督としてクレジットされることはなかったものの、ダークな作風で知られるスナイダー監督とは違った明るい面を取り入れ、全米興収は2億2700万ドルとまずまずな結果に。真逆とも言える監督に交代したことで、ファンの間では「オリジナル版も観てみたい」との声が相次いだ。  このように監督交代といっても、その結果は千差万別。スポーツの世界でも、アートの世界でも起きうる事態だが、グローバル化が進み、ビジネス市場が拡大していくなかで、今後こういった交代劇を目にする機会はさらに増えそうだ。はたして場外で起きたドラマはどのように作用するのか? 試合や作品を鑑賞する前に、そんな部分にも思いを馳せてみてはどうだろう? <取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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