実はアジア3位のビール消費量。意外なビール大国「ベトナム」の独特なビール文化

ベトナムで飲むべきビールはこれ!

ハノイで見かけたビア・サイゴンのスペシャル

 今、ベトナムで人気の銘柄は「サイゴン・ビール」だ。ベトナム語ではビア・サイゴンと呼ばれる。これは名称通り、南部の銘柄で「サイゴンビール・アルコール飲料総公社(SABECO)」が製造する。ベトナムは地方ごとにビールの銘柄がある。かつては陸路移動も不便だった国柄で、各地で地ビールとして発展したものと見られる。  ビア・サイゴンはこの名称を名乗る銘柄だけで4タイプがある。一般的にビア・サイゴンというともっとも廉価な緑ラベルのラガータイプになる。それから赤ラベルの「エクスポート」。緑はあまり飲まれている様子が見られないが、価格とアルコール度数などのコストパフォーマンスから、南部の若者には赤ラベルがもっとも人気がある。さらに、モルト100%のプレミアビール「スペシャル」と、この上に「ゴールド」も登場しているが、ホーチミンでもあまり見かけないほどプレミアなビールのようである。  外国人にはスペシャルがよく飲まれる。そして、このスペシャルをSABECOはイチオシにしており、今やハノイの商店で見られるまでになった。かつてのベトナムでは「ビール!」と注文するとその土地の銘柄が出てきた。少なくとも2011年ごろはそれが常識だった。それが今やビア・サイゴン・スペシャルがベトナム全土を席巻していて、そこかしこで見られるようになっている。

ハノイの銘柄はビア・ハノイ。瓶や缶、ロゴが色の違うタイプもある

 ハノイでは「ビア・ハノイ」が主要銘柄になる。製造者は「ハノイ・ビア・アルコール飲料総公社(HABECO)」で、先のように以前はハノイで銘柄指定なしで注文をするとこれが出てきた。確かにあまり冴えない味わいという気はするが、筆者としてはハノイで飲む分にはあまり悪い気はしない。しかし、現状は驚くほどに人気がない。ビア・サイゴンがハノイに進出している一方で、南部の大都市ホーチミンでビア・ハノイを見ることはまずない。  ビア・ハノイは1890年、ビア・サイゴンは1875年ごろ(現ブランドの前身から数えて)に醸造が始まっている。大手醸造所はもうひとつあり、「ベトナム・ブリュワリー」社で、「ハイネケン」やシンガポールの「タイガービール」、中部ダナンで人気のビール「ラルー」を製造する。ラルーはフランス人醸造技師によって1909年に醸造が始まっている歴史のあるビールだ。

中部の港湾都市ダナンで人気の銘柄はこのラルー

 ほかにも小規模の醸造所が20箇所前後もあり、ベトナム最後の王朝である阮朝(ぐえんちょう)があったフエのビール醸造所は特に有名だ。  ベトナムを大きく分類すると、北部、中部、南西部、メコンデルタという地方がある。各地で人気ビールや地ビールが違うので、ベトナムはビールを求める旅という楽しみ方もある。
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独特の生ビール文化がおもしろい!
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