高度プロフェッショナル制度が日本経済を低迷させるこれだけの理由

田中信一郎

bee / PIXTA(ピクスタ)

 安倍政権は、今国会(第196回国会)の中心テーマに「働き方改革」を掲げ、国会に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」(働き方法案)を提出しています。働き方法案は、18年5月31日に自由民主党・公明党の与党と、日本維新の会等の賛成多数で衆議院を通過し、6月9日現在は参議院で審議中です。立憲民主党や国民民主党、日本共産党等の野党は、反対しました。

 働き方法案のうち、政府与党と経営者団体(日本経済団体連合会)が導入に強いこだわりを見せているのが「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)です。高プロについては、労働問題に取り組む研究者や弁護士、労働組合を中心に、働く環境を守る観点から問題点が示されています。ハーバービジネスオンラインでの佐々木亮弁護士へのインタビュー記事(参照:「強行採決されそうな「高度プロフェッショナル制度」は、一億総ブラック企業従業員にする欠陥制度」)は、問題点を分かりやすくまとめていますので、ご一読をお勧めします。

 また、法政大学の上西充子教授のブログは、国会審議の状況を含め、詳細に問題点を解説しています。立憲民主党等の野党が高プロの導入に反対するのも、同じ理由です。

 なぜ、政府与党と経団連は高プロの導入を求めているのでしょうか。安倍晋三首相は、4月27日の衆議院本会議で次のように答弁しています。

“我が国の労働生産性の低さは大きな課題です。こうした課題に立ち向かうため、第四次産業革命の出現やグローバル化のもと、我が国は高い付加価値を生み出していく経済を追求していく必要があります。付加価値の高い革新的な分野では、高度専門職の方であって、希望する方が、仕事の進め方等をみずから決定し、その意欲や能力を有効に発揮することが求められます。こうした方たちが能力を発揮することによって、新しい産業が発展し、ひいては日本全体の生産性向上につながっていくものと考えます。このような考え方のもと、高い年収の確保、職務範囲の明確化等の要件を設定した上で、雇用関係のもとで自律的に働くことができる高度プロフェッショナル制度を働き方改革の選択肢として整備することが重要です。”

 つまり、付加価値を増やす(=経済成長する)ために高プロを導入するというのが、政府与党と経団連の理由です。経済成長のためには、働く環境が多少悪化する恐れは、やむを得ないという判断なのでしょう。

 ここで、一つの疑問が浮かびます。はたして、高プロは「付加価値を増やす」ことに資するのでしょうか。

 筆者は、高プロが日本経済の低迷を助長するのではないかと考えています。「労働生産性の低さ」という課題認識や「高い付加価値を生み出していく経済を追求」するという方針については、異存ありません。けれども、そのための手段としての高プロには、強い疑問を抱いています。参議院では、労働政策に加え、経済政策の視点からも、高プロの議論が深まることを期待しています。なお、本論考は、ツイッター(@TanakaShinsyu)モーメント「高プロは経済を低迷させる」を再構成したものです。

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日本企業が直面している「労働生産性」の問題

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