集団暴力、無期限拘束……。あまりに酷い、入管収容所における外国人虐待の実態

東京入管の窓

東京入管の窓から手を振る被収容者

 高まる批判に危機感を抱いたのか、東日本入国管理センターは5月23日、報道陣にその収容施設を公開した。一日6時間、収容施設内の共用スペースを自由に使えることや、卓球台などのスポーツ設備があることを強調した。  だが織田さんは「長い間家族から引き離され、いつ解放されるのかもわからずに収容され続ける。そもそも、それが当たり前であること自体が問題です」と話す。「本人も家族も、精神的にやられてしまう。クマルさんも1年間収容され、仮放免が却下されて収容延長が決まった後の自殺でした」

被収容者たちには、帰国できない理由がある

 入管が収容を行う法律上の理由は、強制送還されるまでの逃亡を防ぐためだ。だが「自国に戻されれば、迫害される恐れがある」「家族(子供など)が日本にいる」など、やむにやまれぬ事情で帰国できない人々が多い。 「そうした個別事情が十分配慮されず、長期収容が入管の裁量のみで行われている」と、入管問題に詳しい児玉晃一弁護士は指摘する。 「刑期が法律で定められた一般の犯罪と異なり、『在留資格がない』とされた外国人の収容は無期限です。入管による収容が妥当かどうかの判断には、第三者機関が関与していない。さらには、仮放免が却下されても本人や弁護士に理由が開示されないため、何が問題なのかがわからない。私が視察したイギリスでは、仮放免にあたる保釈審査は入管ではなく『難民移民審判所』が行い、そこでのやり取りは被収容者もビデオを通じて確認できます。保釈の可否も、申請から1~3か月かかる日本と異なり、3~6日ほどで結果が出るなど、非常に迅速です」  クマルさん自殺の真相解明と医療環境の改善、長期収容の見直しを求める署名は約1万7000筆が集まった。こうした声に法務省と入管は耳を傾けるべきだろう。
父親の解放を叫ぶ少女

父親の解放を叫ぶ少女。日本の学校に通う彼女も、成人すれば収容される可能性もある

<取材・文・撮影/志葉 玲> ― 入管収容所の外国人虐待 ―
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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