さて、ここからが本題だ。
パチンコ業界の、高射幸性パチスロ機に関わる規制は、あくまで「設置比率」である。
ホールに設置されているパチスロ機の総台数に対して、高射幸性遊技機が何%あるのかというのが問題なのである。それならば、「総台数」(分母)を増やせば、高射幸性遊技機も多く設置できる、という発想になる。
仮に「立ちスロ」を200台設置すれば、現行規制の30%の場合なら60台、15%規制が発動しても30台の高射幸性パチスロ機を「余分に」設置することが出来るのだ。
この「立ちスロ」設置による高射幸性パチスロ機の「増台」は、パチンコ店を規制している風営法に抵触するものではない。風営法では、客が遊技出来る環境があれば、遊技機の設置を認めざるを得ない。よって違法ではない。
一方、業界内における自主規制の観点からはどうか。自主規制の目的は、高射幸性パチスロ機の段階的な減台にあるのは明らかではあるが、あくまで設置比率を基準にしている以上、ルール違反をしている訳ではない。
法の観点からも、業界のルールからも、「立ちスロ」をただちに「アウト!」とは言えない。
ただ、これだけ「ギャンブル依存症」が問題視され、パチンコ業界としても、業界の存亡をかけて対策を講じているなか、法やルールではなく、倫理的にアウトなのではないかとの声も上がる。
パチンコ業界における最大規模のパチンコホール団体である全日遊連では、4月25日に、全国の組合員ホールに向けて「高射幸性回胴式遊技機の削減に向けた取組の実施について」という文書を送っている。
そこには、次のような文言が書かれている。
① 高射幸性回胴式遊技機の設置可能台数を増やすため、お客様が遊技をすることを想定していないような遊技機を設置して総設置台数を増やす、「取組を逃れるための増台行為」を行わないこと。
② 高射幸性回胴式遊技機の設置比率については、目標値の範囲内で一時的に増減することはあっても、高射幸性回胴式遊技機の早期削減に向け、一貫して「減少傾向」となるよう努めること。
この文書に書かれている事に反したからといって、何かしらの罰則を被る訳ではない。まして組合員でないホール(現時点で「立ちスロ」を積極導入しているホールは組合員でない場合が多い)であれば尚更である。
しかし業界内では「立ちスロ」に関し、出来得る限りの対策を講じたいとしている。「立ちスロ」は営業の知恵なのか。それとも倫理に反した非道徳な行いなのか。
倫理と利益を天秤にかけ、利益を優先した企業の落日を、世間の人は多く知っている。問われているのは、パチンコホールと、そしてパチンコ業界の倫理観である。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>