愛人に大金をつぎ込む中高年男性の「異常な」精神状態とは?<現役愛人が説く経済学38>

非合理的な消費行動をするコアファンの獲得が、愛人ビジネスの成否を分ける

 Aさんに話を伺うと、次のようにおっしゃいます。 「嫁との関係に温かいものはなく、ずっと寂しかった。医者の仕事は毎日の繰り返しで大きな変化がなく、やりがいはあるが、どこかに『自分を好きになってくれる女性』がいないものかと孤独を抱えていたと思う。  そんなとき、君と出会った。君の人生を支えることが僕の生きがいになったんだ。医者だから銀行はお金を貸してくれる。僕の生活が万が一苦しくなっても、僕は生きがいを感じながら借金するだろう。そのくらい僕は本気で君を支えていきたいと思っている」  文字に起こしてみますとお分かりかと思いますが、Aさんの言動は、ハッキリ申し上げて「異常」です。そして、ここまで異常な精神状態こそ「コアファン」のそれなのです。  お給料の大半をアイドルの応援につぎ込むファン、特定の高級ブランドに惚れ込んで、新作を買い占めるためリボ払い地獄に陥るOL、特に理由もないのに、1社に対して何十年も高い保険料を払い続ける無自覚なサラリーマン、そして、妻以外の女性に可処分所得のほとんどをつぎ込む中年男性、Aさん。  他人にかけている迷惑の度合いこそ違いますが、いずれも共通しているのは「相手の売上を支えるコアファン」であるということです。彼らはブランド信仰が恐ろしく強く、「コレがなければ自分じゃない」というほどの思い込みで動いております。  結果的に、他人から見れば「あんなものに大金をかけるなんて、よくやるなぁ」と思われるような消費行動へと向かうのです。もはや合理的な行為ではありませんが、彼らはその非合理性によってこそ、人生の充足感を得ているのです。  業績が安定している企業の多くは、こうした非合理な「少数のコアファン」に支えられております。不況になっても、自分が好きなブランドだけは手放さない人がいるから、ブランドビジネスは成り立ちます。  この観点から申し上げますと、愛人男性にとってかけがえのないブランドになれるかどうか。その結果が、愛人ビジネスの成否につながるといっても過言ではないでしょう。 <文・東條才子>
1
2
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会